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黒岩航紀&伊藤万桜&陬波花梨・西岡沙樹・笹沼樹&上田晴子

  • 執筆者の写真: 池田卓夫 Takuo Ikeda
    池田卓夫 Takuo Ikeda
  • 8月7日
  • 読了時間: 3分

クラシックディスク・今月の3点(2025年7月)

どれも個性的な内容
どれも個性的な内容

「かつて夜の灰色から浮かび出て」

黒岩航紀(ピアノ)、伊藤万桜(ヴァイオリン)、陬波花梨(サクソフォン)

ドビュッシー「夢想」

ミヨー「組曲 Op.157b」

ドフォンテーヌ「夢の色彩」

久保哲朗「かつて夜の灰色から浮かび出て」

ラヴェル「ピアノ三重奏曲イ短調」


ピアノ三重奏といえば、普通はピアノとヴァイオリン、チェロだが、このディスクはチェロの代わりに時代が少し下った楽器のサクソフォンが入り、面白いハーモニーを奏でている。フランス近代を代表するドビュッシー、ラヴェル、ミヨーに対し、ジャン=リュク・フォンテーヌ(1971ー)は現存作曲家だが、前衛にはくみさず、印象派へのオマージュのようにも響く。アルバムタイトルはパウル・クレーの絵画から採用、久保哲朗(1992ー)が自身への委嘱作の出発点とした。全曲中では最も「現代音楽」だが、非常に精密かつ繊細に書かれ、前後の作品と違和感なく調和する。ラヴェルの「ピアノ三重奏曲」のサックス版を聴けば、3人の演奏家の技倆の高さがはっきりと理解できる。2024年9月3&4日、東京・三鷹市芸術文化センター「風のホール」でセッション録音。

(録音・制作=N&F、販売=ユニバーサル ミュージック)


ガブリエル・フォーレ:ピアノ・ソロ作品全集 第1巻

Disc1

「ヴァルス=カプリス」「3つの無言歌 Op.17」「即興曲集(第1番~第5番)」「マズルカ Op.32」「バラード 嬰ヘ長調 Op.19(ピアノソロ版)」

Disc2

「舟歌(全13曲)」


西岡は京都市立芸術大学からパリ国立高等音楽院へ進み、フランスの第5回フォーレ国際ピアノ・コンクールで第2位・聴衆賞を得た。2023年には大阪・あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホールの「フェニックス・エヴォリューション・シリーズ」に起用され、全曲フォーレのリサイタルで高い評価を得た。同年10月から没後100年の2024年4月にかけ、滋賀県高島市文化ホール「ガリバーホール」でフォーレのピアノ独奏曲全曲、ディスク4枚分のレコーディングを完成。2枚ずつ2巻に分けてのリリースの第1巻が当盤だ。本国フランスをはじめとする巨匠大家の録音がひしめく中、西岡はどこまでも自身の感性と研究に基づき、それぞれの楽曲の良さを適確に聴き手の耳へと届ける。聴けば聴くほど、味わいを増していく演奏だ。

(ライヴノーツ=ナミレコード)


「夜と光の出会うところ」

笹沼樹(チェロ)、上田晴子(ピアノ)

R.シュトラウス:チェロ・ソナタ ヘ長調 Op.6 (1883)

グラズノフ「吟遊詩人の歌 Op.71 (1901)」

ラフマニノフ「サロンの小品 Op.6 (1893)~ロマンス/ハンガリー舞曲」「ヴォカリーズ」 Op.34-14 (1912)

プロコフィエフ「『シンデレラ』~アダージョ Op.97bis (1945)」「チェロ・ソナタ ハ長調 Op.119 (1949)」

ラフマニノフ「ロマンス (1890)」


笹沼はすでに齋藤秀雄メモリアル基金賞を受け、カルテット・アマービレの一員だけでなく東京交響楽団首席奏者としても活躍する。桐朋学園大学のソリスト・ディプロマ・コースを修了したが、学習院大学文学部ドイツ語圏文化学科も卒業、独特の美意識と知性を滲ませた演奏で徐々に支持者を増やしてきた。ここではデュオの達人、上田のピアノを得てドイツのR・シュトラウスとロシアの諸曲を巧みに組み合わせ、他のチェロ奏者とは「ひと味違う」世界の音楽を繰り広げる。2023年1月17〜19日、埼玉県・川口総合文化センター・リリアでセッション録音。

(ALM=コジマ録音)


※URLはアマゾンの購入サイトです

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