マロフェーエフ・北村朋幹・中野振一郎
- 池田卓夫 Takuo Ikeda

- 5 日前
- 読了時間: 9分
クラシックディスク・今月の3点(2026年2月)

「忘れられた調べーロシア・ピアノ作品集」
アレクサンダー・マロフェーエフ(ピアノ)
CD1
ミハイル・グリンカ
1. 歌曲集『サンクトペテルブルクへの別れ』より第10曲「ひばり」変ロ短調[バラキレフ編]
2. マズルカ ハ長調
3. マズルカ ハ短調
4. ポルカ ニ短調
5. 別れのワルツ ト長調
ニコライ・メトネル
『忘れられた調べ』第1集 Op.38
6. 第1曲 ソナタ「回想」
7. 第2曲 優美な舞曲
8. 第3曲 祝祭の舞曲
9. 第4曲 川の歌
10. 第5曲 田舎風の舞曲
11. 第6曲 夕べの歌
12. 第7曲 森の舞曲
13. 第8曲 回想ふうに(コーダ)
14. 『おとぎ話』 Op.48より第2曲「妖精の物語」 ト短調
CD2
セルゲイ・ラフマニノフ
1. 『幻想的小品集』 Op.3より第2曲 前奏曲「鐘」 嬰ハ短調
2. 断片
ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 Op.36[1931年改訂版]
3. I ALLEGRO AGITATO
4. II NON ALLEGRO – LENTO – attacca
5. III L’ISTESSO TEMPO – ALLEGRO MOLTO
6. 『12のロマンス』 Op.21より第5曲「ライラック」 変イ長調
7. 『幻想的小品集』 Op.3より第1曲「エレジー」 変ホ短調
絵画的練習曲『音の絵』Op.33より
8. 第3曲 グラーヴェ ハ短調
9. 第7曲 モデラート ト短調
10. 第8曲 グラーヴェ 嬰ハ短調
アレクサンドル・グラズノフ
11. 『3つの練習曲』 Op.31より第3曲「夜」 ホ長調
12. ヴォルガの船歌 イ短調 Op.97
13. 牧歌 嬰ヘ長調 Op.103
14. 『3つの小品』 Op.42より第3曲 ワルツ ニ長調
アレクサンダー・マロフェーエフは、2001年生まれのロシアのピアニスト。エフゲニー・キーシンも育ったロシアの名門グネーシン特別学校、チャイコフスキー記念モスクワ音楽院で研鑽を積み、2014年には13歳の若さで「チャイコフスキー国際音楽コンクール」ジュニア部門で優勝を果たし、注目を集める。以降、世界主要オーケストラや著名指揮者と共演し、国際音楽祭にも多数出演。超絶技巧と深い表現力で“新世代のヴィルトゥオーゾ”として高い評価を受ける。2025年にソニー・クラシカルと専属レコーディング契約。本作では、祖国を逃れ、故郷から離れて生涯を終えた4人のロシア作曲家に焦点を当て、グリンカ、メトネル、ラフマニノフ、グラズノフの作品を収録。根底に流れる“ノスタルジア”をテーマに、卓越した技巧と深い詩情で描き出す。「4人の作曲家は皆、どこか架空の“失われた世界”を懐かしんでいるように感じるのです。そしてそれは本当に存在していたのかすら、曖昧で……このアルバム全体に、そういった夢想的な空気が漂っています。私が自分の拠点としてベルリンを選んだのは偶然でしたが、実はかつてグリンカ、グラズノフ、メトネルもこの地に縁を持っていました」と、マロフェーエフは語る。(ソニーミュージックのサイトより)
久しぶりに「正調」のロシアン・ピアニズムを聴いた。どの作品も高度のテクニックと作曲家の内面に目を向けた解釈の深さによって、新たな輝きを得ている。2025年2月20〜22日と3月1〜6日、ドイツ・ベルリンのイエス・キリスト教会でたっぷりと時間をかけて収めたセッション録音は、際立った音のクオリティーでも強い印象を残す。胸のすくアルバム。
(ソニーミュージック)
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北村朋幹「アステリズム」
1. 武満 徹:アステリズム(1968)
2. ベリオ:セクエンツァ IV(1965)
3. シュトックハウゼン:ピアノ曲 IX(1954, 61)
4. メシアン:峡谷から星たちへ・・・(1971-4)~第9曲『マネシツグミ』
5. 八村義夫:星辰譜 Op.5(1969)
6. 武満 徹:フォー・アウェイ(1973)
北村朋幹(ピアノ)
林 悠介(ヴァイオリン:5)
野本洋介(ヴィブラフォン:5)
西久保友広(チューブラーベル:5)
札幌交響楽団(1)
井上道義(指揮:1)
録音時期:2024年5月25,26日(1)、2025年4月8-10日(2-4,6)、11月10日(5)
録音場所:北海道、札幌コンサートホールKitara(1)、東京、三鷹市文化センター 風のホール(2-4,6)、読売日本交響楽団練習所(5)
先ずはフォンテックのプレス資料から:前作CD『リスト:巡礼の年 全3年』ほかの成果により、令和6年度(第75回)芸術選奨 音楽部門 文部科学大臣新人賞を受賞した北村朋幹。古楽器を含む独奏、協奏曲、室内楽、さらに近年は指揮へと比類なき活動の幅を広げています。自らの主要レパートリーとして、20世紀の音楽に熱い共感を抱く北村。「星群・星座」を反映する作品群とそれらを照射する名作・・・戦後の前衛運動を経て創作された音楽へ真摯に向き合うこと。今日的な視点を反映する演奏により、これらの作品は「新しい古典」へと昇華します。1970年代より数多くの作品を演奏し、「私の音楽と最も調和しているオーケストラだ」と武徹 徹に言わしめた札幌交響楽団。そして1976年の第161回定期での初登場以来以来、60回を超える公演を経て、当該収録の第661回定期が同響との最後の共演となった井上道義。約半世紀ぶりの登場となる『アステリズム』の新録音はモニュメンタルな記録となりました。
2024年5月末。私は同年末の引退を宣言した井上道義と札響、最後の共演を聴きに現地へ飛んだ。メインのクセナキス「ノモス・ガンマ」、ラストのラヴェル「ボレロ」も凄まじかったが、札響と深い絆で結ばれた武満徹の2曲で固めた前半にはまた、別格の味わいがあった。17人の弦楽器奏者のための「地平線のドーリア」に続き、北村がソロを担った「アステリズム」は指揮者とピアニストの個性がぶつかり合い、ライブならではの生々しい時間が現出した。2日間の演奏の感触はけっこう異なっていたように思うが、フォンテックの編集はズレやミスを巧みに補い、違和感なく仕上がっている。音像の鮮烈さも見事だ。
ベリオ、シュトックハウゼン、メシアン、八村義夫(渋い!)と同時代の伊独仏日の作曲家をはさみ、最後は再び武満の室内楽曲「フォー・アウエイ」を読売日本交響楽団の名手たちと奏でる。1枚のアルバムを通して聴き終えた時、私たちが生きてきた「近過去」の情景がはっきりと見えてくるはずだ。CDとSACDのハイブリッド盤。
(フォンテック)
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中野振一郎「ラモー:クラヴサン曲全集 Ⅰ」
Disc1
ラモー:
● クラヴサン曲集 第1巻 (1706)
・組曲 イ調
プレリュード(02:36)
アルマンド(04:49)
第2アルマンド(01:48)
クーラント(02:00)
ジーグ(02:30)
サラバンド(02:52)
ヴェネツィアの女(01:32)
ガヴォット(02:06)
メヌエット(01:25)
● クラヴサン曲集 第2巻 (1724)
・運指法を記したメヌエット ハ長調(00:59)
・組曲 ホ調
アルマンド(04:06)
クーラント(01:37)
ロンドー形式によるジーグ(01:46)
ロンドー形式による第2ジーグ(02:06)
鳥のさえずり(03:00)
リゴドン(02:16)
ロンドー形式によるミュゼット 優雅に(03:24)
タンブーラン(01:15)
村娘(03:08)
・コンセールによるクラヴサン曲集より抜粋編曲されたクラヴサン独奏小品4曲 (1741)
リヴリ(02:43)
挑発(02:39)
内気(05:33)
無遠慮 生き生きと(01:38)
・王太子妃 ト短調 (1747)(03:55)
Disc2
● クラヴサン曲集 第3巻(新クラヴサン曲集) (c.1729-30)
・組曲 ト調
トリコテ(03:04)
無頓着(02:01)
メヌエット(02:37)
雌鶏(05:30)
トリオレ(04:20)
未開人(01:55)
エンハーモニック 優美に-大胆に、同じ速さで-優美に-大胆に-優美に-大胆に-優美に(09:17)
・ジプシー風(03:26)
ジャン=フランソワ・タプレ[1738-1819]:
・『未開人』変奏曲 ト短調(14:59)
ラモー:
・小さな金槌 ハ調(02:02)
・オペラ『ピグマリオン』 (1748) クラヴサン編:C.バルバートル/中野振一郎
序曲(04:57)
サラバンド(03:13)
タンブーラン(01:21)
パントマイム 陽気なエール(02:12)
ジーグ 陽気に(02:54)
コントルダンス(02:16)
「ラモー:クラヴサン曲全集 第Ⅱ集」
Disc1
ラモー:
● クラヴサン曲集 第2巻 (1724)
・組曲 二調
01. やさしい嘆き(03:12)
02. ソローニュの愚か者(05:59)
03. ため息(優雅に)(05:52)
04. 歓び(01:14)
05. 茶目っ気(01:38)
06. ミューズたちの対話(06:09)
07. つむじ風(02:28)
08. 一つ目の巨人キュクロプス(03:25)
09. あざけり/メヌエット(00:59)
10. びっこ(01:04)
● クラヴサン曲集 第3巻(新クラヴサン曲集) (c.1729-30)
・組曲 イ調
11. アルマンド(07:17)
12. クーラント(03:46)
13. サラバンド(03:00)
14. 3つの手(04:35)
15. ファンファリネット(02:42)
16. 意気揚々(01:39)
17. ガヴォットと変奏(09:59)
Disc2
● オペラ=バレ『優雅なインドの国々』 (1735/36) クラヴサン編
・第1コンセール
18. 序曲(04:24)
19. アントレ(優美に)(02:26)
20. ポーランド人のエール(重々しく)(02:09)
21. ロンドー形式によるミュゼット(02:05)
22. 第1、第2メヌエット(04:13)
23. 愛神たちの優美なエール(02:58)
・第2コンセール
24. 恋人たちのエール(01:58)
25. 後宮の番人『オスマン帝国』の第1エール(02:06)
26. ガヴォット(遅く)(01:52)
27. 後宮の番人の第2エール(01:33)
28. 花々の第1エール(01:27)
29. 薔薇の優雅なエール(02:39)
30. 花々のガヴォット(01:32)
31. 北風の神ボレアスと薔薇のエール(01:34)
32. 西風の神ゼフィロスのエール(00:29)
33. 西風の神ゼフィロスと薔薇の生き生きとしたエール(03:54)
34. 花々の快活なガヴォット(00:53)
35. ペルシャ人の行進(生き生きと)(01:55)
・第3コンセール
36. アフリカ人奴隷のエール(01:35)
37. ロンドー形式によるリゴドン(01:49)
38. 第1、第2タンブーラン(02:13)
・第4コンセール
39. エール(快活に)(01:42)
40. リトルネッロ(01:14)
41. ペルーのインカ人の荘重なエール(03:01)
42. ロンドー形式によるルール(遅くなく)(02:00)
43. 優美なロンドー(02:01)
44. 第1ガヴォット(陽気に)、ロンドー形式による第2ガヴォット(03:29)
45. 未開人(02:36)
46. 戦士と女戦士アマゾネスのメヌエット(02:38)
47. シャコンヌ(05:37)
48. 4声のカノン(フレール・ジャック ト長調)(02:18) クラヴサン編:中野振一郎
使用楽器:アトリエ・フォン・ナーゲル社1993年製、フレンチ2段チェンバロ(ブランシェ 1730モデル サラマンカホール所蔵)
録音時期:2024年4月9-12日、9月9-12日、2025年4月14-17日
録音場所:岐阜県、サラマンカホール(Ⅰ&Ⅱ共通)
中野振一郎(チェンバロ)
販売元「299 Music」の宣伝文:ジャン=フィリップ・ラモーのクラヴサン作品は「知性と感性が見事なバランスで紡がれた音楽」といえます。近代的鍵盤の妙技によって描かれる世界は、甘く優雅な響き、機知と茶目っ気に富んだ表現、耽美的で親しみある旋律など、まるで劇音楽のシーンが目まぐるしく移ろうかのようです。長年にわたりチェンバロ界をリードし続ける中野振一郎が、音楽的探求心や社会的・文化的な動向が色濃く反映されたフランス・ロココの「粋」を現代に蘇らせます。
改めて紹介するまでもないが、まだ中野振一郎を知らない方のために音楽事務所kajimotoのホームページに掲載されたプロフィールも貼っておく:https://www.kajimotomusic.com/artists-projects/shin-ichiro-nakano/
東京の桐朋学園大学に学んだ4年間も一貫して関西弁で過ごしたエピソードの持ち主。ヨーロッパへの留学歴がないにもかかわらず、18世紀フランスのクラヴサン(チェンバロのフランス語名)音楽の演奏解釈で世界的評価を得てきた理由の1つは、みやびな京都人の感性にあると確信してきた。若い頃の才気煥発な演奏も素晴らしかったが、還暦(60歳)と前後して「299Music」レーベルで始めた日本人初のクープラン(完成済)、ラモーの全曲録音では円熟のみならず、より躊躇なく核心へと迫る思い切りの良さ、切れ味といった〝若さ〟を獲得しているのが素晴らしい。録音も非常に鮮明なので、こうした楽曲にあまり馴染みのない人が2枚、あるいは4枚を通して聴いても、飽きることはない。見事な熟成だと思う。
(299 Music)
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