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エリシュカ&札響のスラヴ音楽SACD化

  • 執筆者の写真: 池田卓夫 Takuo Ikeda
    池田卓夫 Takuo Ikeda
  • 4 日前
  • 読了時間: 3分
すべて札幌まで出かけて聴いた思い出の演奏
すべて札幌まで出かけて聴いた思い出の演奏

チェコの名指揮者ラドミル・エリシュカ(1931ー2019)の初来日は2004年、73歳と遅ればせだったが、2006年に客演した札幌交響楽団(札響)とは瞬く間に〝相思相愛〟の関係となり、キャリアに終止符を打った2017年まで続いた。最後の演奏会に至るまでの経緯は当時、「日本経済新聞」電子版に書いた:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24029700Z21C17A1000000/


「ドヴォルザーク没後100年(2004年)に本物の指揮者を呼びたい」と考え、チェコのオーケストラに在籍する日本人楽員の情報を頼りにエリシュカに白羽の矢を立て、日本へ招いたのはNHKの音楽プロデューサーだった梶吉洋一郎氏。奥様の久美子さんはチェコ語に堪能だった。札響との演奏会はドヴォルザークやスメタナ、チャイコフスキーなどのスラヴ音楽を梶吉夫妻の「オフィス ブロウチェク」レーベル、ブラームスやベートーヴェンのドイツ音楽を齋藤啓介氏の「アルトゥス・ミュージック」レーベルが分担する形で収録された。


今回、「ブロウチェク」がライセンス提供した音源に齋藤氏がDSD方式のリマスタリングを施して長時間収録(1枚あたり200分前後)のSACDシングルレイヤー(一般のCD専用プレーヤーでは再生できない)盤3点にまとめ、タワーレコードからの発売が実現した。


1)ドヴォルザーク交響曲集(205分)

1. 交響曲 第5番 ヘ長調 Op.76, B.54

2. 交響曲 第6番 ニ長調 Op.60, B.112

3. 交響曲 第7番 ニ短調 Op.70, B.141

4. 交響曲 第8番 ト長調 Op.88, B.163

5. 交響曲 第9番 ホ短調 「新世界より」 Op.95, B.178


2)スメタナ・ヤナーチェク・チェコ音楽集(194分)

1. スメタナ:連作交響詩「我が祖国」(全曲) ※唯一のセッション録音

2. スメタナ:交響詩「ワレンシュタインの陣営」 Op.14

3. ヤナーチェク:シンフォニエッタ

4. ヤナーチェク:狂詩曲「タラス・ブーリバ」

5. ヤナーチェク:組曲「利口な女狐の物語」(ヴァーツラフ・ターリヒ編)

6. ヴォジーシェク:交響曲 ニ長調 Op.24


3)チャイコフスキー:後期3大交響曲、ドヴォルザーク:管弦楽作品集(243分)

1. チャイコフスキー:交響曲第4番 ヘ短調 Op.36

2. チャイコフスキー:交響曲第5番 ホ短調 Op.64

3. チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調 Op.74「悲愴」

4. ドヴォルザーク:弦楽セレナード ホ長調 Op.22

5. ドヴォルザーク:スケルツォ・カプリチオーソ Op.66

6. ドヴォルザーク:序曲「自然の王国で」 Op.91

7. ドヴォルザーク:交響詩「水の精」 Op.107

8. ドヴォルザーク:交響詩「野鳩」 Op.110


いずれも「世界のアコースティシャン」豊田泰久氏が音響設計を手がけ、音響の素晴らしさに定評のある札響の本拠地(フランチャイズ)、札幌コンサートホールKitaraでの演奏だ。多くは同一プログラムを2日間演奏、私も可能な限り初日ゲネプロから2日目の本番終演まで立ち会った。「インバウンド」の外国人観光客が爆発的に増加する前で、札幌へのフライトもホテルも今とは比べものにならないほど安かった。札響との強い絆から紡ぎ出される芯の通った美しい響きと格調高い解釈にはいつも、心の底から魅了されたのは今も薄れない記憶だ。ところがCD、とりわけ「ブロウチェク」の音はNHK的というか、何か今ひとつ切れ味に欠ける仕上がりだった気がする。今回、齋藤氏の入念な調整を経て、Kitaraの客席で聴いていた時の感触がありありと甦ってきた。マエストロは2019年9月1日に世を去り、梶吉洋一郎氏も1年後の同じ日に亡くなった。21世紀初頭の札幌で繰り広げられた「奇跡の音楽」の軌跡は飛躍的に解像度を高めた音源ともども、今後も語り継がれていくことだろう。



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