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  • 執筆者の写真池田卓夫 Takuo Ikeda

「歓喜と喝采」で福岡天神の夜は更けて


打ち上げでご機嫌の広渡勲師匠

四半世紀にわたり、舞台芸術とは何かを私に叩き込み続けて下さっている先輩(ギョーカイと大学の両方で)、広渡勲さんが毎年12月、郷里の福岡市で西日本シティ銀行グループと福岡文化財団のために制作(総監督・構成・演出)する「NCB音楽祭」の「2018《歓喜と喝采》」の本番(2018年12月8日、アクロス福岡シンフォーニーホール)に立ち会うため、今年も福岡に滞在した。毎年、福岡市出身の井﨑正浩が九州交響楽団を指揮、ソリストもゲストも司会者(神田紅)も全員、九州出身者で固める徹底ぶり。前半はベートーヴェンの「交響曲第9番《合唱付》」の第4楽章、後半は年ごとにテーマを替えてのお楽しみプログラムで、一般公募のNCBフロイデ合唱団が「第九」だけでなく後半にも出演するため、7ヶ月に渡って井﨑らの指導を受ける。



今年の曲目は画像の通りで、後半はガーシュウィン生誕120周年、バーンスタイン生誕100年のダブルアニバーサリーにちなむアメリカ音楽特集。菊田一夫が日本にミュージカルを導入した時代の東宝演劇部に入社し、舞台制作の基礎を学んだ広渡さんの蓄積が最も派手に開花する領域である。声楽ソリストはソプラノの嘉目真木子(大分県出身)、アルトの手嶋眞佐子(福岡県出身)、テノールの井ノ上了史(同)、バリトンの与那城敬(宮崎県出身)の「第九」カルテットに、バーンスタイン「キャンディード」のクネゴンデのアリアに抜擢された新進ソプラノの吉田明未(福岡県出身)と全員、東京二期会の会員だった。


ガーシュイン「ラプソディ・イン・ブルー」のピアニスト、田中菜緒子とダンサーの中島周(東京バレエ団出身)はともに福岡県久留米市の生まれ。田中は「とにかく、九州出身で舞台映えのするジャズ・ピアニストを探してちょうだい!」という広渡師匠の無茶振りでネットサーフィンを続け、奇跡的に発見した桐朋学園出身の才媛。在学中クラシックの国際コンクールで優勝したバックグラウンドながら、卒業後にジャズに興味を持ち、各地のライヴハウスで精力的に出演している。ちょうど1年前の12月、広渡さんと待ち合わせ、南青山のジャズクラブへ偵察に出かけた。終演後、「《ラプソディ・イン・ブルー》を九響と1年後、アクロスの大ホールで弾けますか?」と唐突に切り出した瞬間は目を丸くしていたし、本番当日も凄く緊張していたが、本番は見事に弾け、故郷に錦を飾った。


ダンスにはFSM福岡スクール・オブ・ミュージック&ダンス専門学校の若者たちが登場、歌手たちのアルテシェニカ(身体表現)も含め、殿畑敦子(福岡県出身)が振り付けた。与那城が歌う「ラマンチャの男」ではギターの上野芽実(宮崎県出身)が花を添えたほか、今年は航空自衛隊西部航空音楽隊(三宅崇生隊長の指揮)の吹奏楽も初めて参加した。最後の「星条旗よ永遠なれ」で会場の興奮は頂点に達し、アンコールの「聖者の行進」へとなだれ込んだ。


和気あいあいの出演者たち。博多の夜は更けゆく。

こんなゴージャスな演奏会が西日本シティ銀行グループの社会貢献事業で入場無料、申し込み招待制というのは何ともうらやましく、贅沢な話だ。福岡はパートナーの勤務地でホテル代がかからず、この時期はフグをはじめ冬の味覚を満喫できるので、来年も絶対にくる!

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