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ジョージア人ソプラノ歌手アンナ・ハライゼがグランプリに輝く〜第27回大阪国際音楽コンクール閉幕

執筆者の写真: 池田卓夫 Takuo Ikeda
池田卓夫 Takuo Ikeda
8 分前
読了時間: 4分
Anna Kharaidze, GRAND PRIX at The 27th Osaka Int'l Music Competition
Anna Kharaidze, GRAND PRIX at The 27th Osaka Int'l Music Competition

第27回大阪国際音楽コンクール最終日(2026年10月11日、大阪・高槻城公園芸術文化劇場南館)、前日まで大阪府内各地で行われていたピアノ、弦楽器、声楽などジャンル&年齢別本選の第1位受賞者を集めた公開コンサート形式の「グランドファイナル」でジョージア出身、ウィーンで学ぶソプラノ歌手アンナ・ハライゼ(Anna Kharaidze)が最高得点を得てグランプリに輝き、客席からの投票に基づくオーディエンス賞なども授かった。


ハライゼの演奏曲目はヴェルディの「歌劇《ラ・トラヴィアータ(椿姫)》」第1幕からヴィオレッタのアリア「ああ、そは彼の人か〜花から花へ」。私は例年、グランドファイナルの審査員を務めるが、2026年は出席がかなわず、前日に審査オブザーバーとして複数の部門の本選に立ち会った。ハライゼが歌う同じアリアも「声楽部門AgeーUアリアコース」本選で偶然、聴くことができた。舞台映えする容姿に恵まれ、全身を無駄なく共鳴させる発声の確かさで際立ち、歌にも深い情感がこもっていた。半面、イタリア語の発音やパッサージョ(低音域=チェストボイス/地声から高音域=ヘッドボイス/裏声へと切り替わる過渡的な音域)の処理には改善の余地を感じたが、これは経験を積むことで自然に解消される範囲の問題だと思った。


同部門の「入賞者」よ呼ばれる第2位、3位にも韓国人、タイ人の声楽音大生が並び、日本人コンテスタントの力量不足は明らかだった。私は2001年の第2回からほぼ毎年、大阪国際音楽コンクールの審査に携わってきたが、20年前は持ち声の良さや圧倒的な声量だけが目立った韓国やタイのコンテスタントが近年、教育システムの目覚ましい改善を受けて合理的な発声テクニック、多言語対応力、解釈演技力を磨き、日本の現状を凌駕するまでに至った。この実態は他の声楽コンクール審査を通じても明らかだ。日本勢の奮起を期待したい。


審査を見学したもう1つは小学校3&4年生を対象にした「ピアノ部門Age-E2」(ムラマツリサイタルホール新大阪)。この年齢(10歳前後)は成長の個体差が大きく、補助ペダルをセットする子もいれば、すでに大人に近い体型の子もいるが、それはあくまで外見であり、演奏技術や打鍵の音量はほぼ全員、申し分ない。トーマス・クロイツベルガー、パク・へヨン、江口文子の各氏ら世界的に知名度の高い審査員たちは当然、メカニックと音楽性の両面を厳正に審査していた。しかしながらコンクールのホームページに掲載された審査結果は、私がメモに記した優劣の順番とは微妙に異なる。


先生方は磐石の演奏技巧、パワフルな打鍵、音量などに評価のポイントを置いたとみられるが、自分は「うるさい」と感じた人もいた。18世紀音楽を達者に弾きこなしたとしても、導音の強拍(アクセント)、解決音の明確なアーティキュレーションなど、楽譜に書かれていない様式の約束=歴史上の演奏情報を地元の先生が十分教えていないのではないかと思われるケースもあり、それが採点にどこまで反映されていたかはよくわからない。音量が控えめであっても美しいタッチ、センスの光る選曲、個性豊かな歌い回し、聴く者を幸せにする温かさといったポイントは「素人の物差し」として、捨象されるべきものなのだろうか?



大阪国際音楽コンクールは2000年、ピアニスト&ピアノ教師の北野蓉子さんが早世した夫の遺志を継ぎ、「演奏家の可能性をすくい上げる道」として個人で立ち上げ、実行委員長として世界規模の催しに育ててきた。現在は自治体や大手企業の支援、官公庁や経営者団体、メディアの後援も受けているが十分とはいえず北野さん、後継者に内定している息子の裕孝さんを中心とするファミリーの肩にのしかかっている負担は計り知れないほど大きい。もちろん大変なことではあるのだけど、北野ファミリーを中心とする人々のヒューマンな結束が、大規模な国際音楽コンクールに例外的な温かみと独自の色合いを与えているのも確かだ。音楽の都=ウィーンとのパイプを「国際」の根本に置く一方で早くからアジア楽壇の潜在性に目を向け、韓国やタイの教育機関&教師とも強力な関係を築いてきた。


今回のコンクール結果、とりわけ審査を見学したピアノ部門について北野実行委員長に率直な感想をお伝えすると、「今の時代の弾き方なんでしょうね。もっとセンシティヴに弾いてほしいと思います。皆、音量だけが立派で…」と、驚くほど率直なコメントが返ってきた。この聴覚と見識こそが運営のバランスをじんわりと整え、日本、さらにはアジア、全世界のコンクール地図の上でもユニークな地位を占めるに至った根本だと、私は確信している。


大阪国際音楽コンクールHP:https://www.osakaimc.com/









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