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イタリアの音と光に合ったテノール2人

  • 執筆者の写真: 池田卓夫 Takuo Ikeda
    池田卓夫 Takuo Ikeda
  • 47 分前
  • 読了時間: 3分

東京二期会オペラ劇場「カヴァレリア・ルスティカーナ」&「道化師」

「道化師」のカーテンコールにマンマ・ルチア(左端)とサントゥッツァ(その隣)も登場
「道化師」のカーテンコールにマンマ・ルチア(左端)とサントゥッツァ(その隣)も登場

東京二期会オペラ劇場「カヴァレリア•ルスティカーナ」(マスカーニ)&「道化師」(レオンカヴァッロ)Aキャスト初日を東京文化会館大ホールで観た。設定を1980年代(衛星放送のアンテナと服装、フィアットのセダンなどから類推)の南イタリア(シチリア?)に移したダミアーノ•ミキエレット演出は「カヴァレリア」にネッダとシルヴィオ、「道化師」にサントゥッツァとマンマ•ルチアを登場させ、廻り舞台の効果も生かしながら2作品の一体感を強調する。アルフィオとトニオも1人のバリトン歌手が演じ分ける。


これに対し東京フィルハーモニー交響楽団を指揮したアンドレア・バッティストーニ(首席指揮者)は、長くヴェリズモ(写実主義)オペラの2本立て定番プログラムに染み付いてきた一体のアプローチを脱し、マスカーニは限りなく激情的な振幅、レオンカヴァッロにはワーグナーへの傾倒を明確に意識した若干遅めのテンポという対照を打ち出した。後者のネッダとシルヴィオの「許されない愛」の密会場面では明らかに、「トリスタンとイゾルデ」という伏線を意識していた。東京フィルも艶やかで美しい音色を奏で、金管楽器がブラスバンドのように突出することもなかった。今年で39歳になるバッティストーニは現在、トリノ王立歌劇場とオペラ・オーストラリア(シドニー)のシェフを兼ね、オペラ指揮者のキャリアを順調に拡大している。東京二期会、東京フィルとは2012年の日本デビュー、「ナブッコ」(ヴェルディ)から共演を重ねており、日本人歌手の長所を引き出す手腕も確かだ。


「カヴァレリア」では先ず、トゥリッドウの前川健生の驚異的な進境に驚かされた。少し軽めのベルカントテノール系の声ながらパワーに満ち、最高音を輝かしく、延々と響かせる。イタリア語の発音も明瞭で、プリモの素質が遂に開花した。次いで、マンマ・ルチアの与田朝子(メゾ・ソプラノ)の衰えない歌唱、適確な演技が光る。アルフィオの今井俊輔(バリトン)は相変わらず豊かな声量の美声だが、音程のコントロールに少し苦労していたようだ。評価が分かれそうなのはサントゥッツァの岡田昌子(ソプラノ)。レナータ・テバルディらソプラノが歌った例も少なくはないが、だいたいはメゾ・ソプラノが担うパートだけに低音の凄みはなく、ひたすらドラマティックかつ体当たりのアプローチで攻めていった。


「道化師」のカニオ、樋口達哉はすでにベテランの域に達したテノールだが、巧みなテクニックと深い内面性をたたえた演奏解釈により、前川とはまた異なる味わいの歌を聴かせて立派だった。今井のトニオは当たり役だけに安定感も増し、物語の始まりと終わりをきっちりと締めた。ネッダは韓国人のイ・スンジェ。バリトンの青山貴と結婚した縁で来日、二期会に入った。陰影に富む音色のドラマティック・ソプラノであり、迫力も満点だった。ペッペの高田正人(テノール)、シルヴィオの与那城敬(バリトン)も手堅く脇を固めていた。


全体として非常に高水準のプロダクションに仕上がった。両作品を通じて、二期会合唱団とNHK東京児童合唱団が歌唱だけでなく演技でも精彩を放っていた。


 
 
 

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