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カルテット・アドロ、野平一郎指揮オーケストラ・ニッポニカ、椎名雄一郎

  • 執筆者の写真: 池田卓夫 Takuo Ikeda
    池田卓夫 Takuo Ikeda
  • 1月13日
  • 読了時間: 4分

クラシックディスク・今月の3点(2025年12月)

ハイドンで新年を寿ぐ
ハイドンで新年を寿ぐ

ハイドン「エルデーティ四重奏曲集作品76」

カルテット・アドロ:第1ヴァイオリン=ジョルダン・ヴィクトリア、第2ヴァイオリン=アレクサンドル・ヴ、ヴィオラ=タンギー・パリソ、チェロ=ジェレミー・ガルバーク


ハイドンの弦楽四重奏曲は交響曲やピアノ・ソナタなどと同じく、そのジャンルを確立した歴史的な意味で重要とされるが、演奏頻度は一部有名曲を除けば決して高くない。古典の様式感を重視するあまり、型通りの面白くない演奏になるリスクの高さも軽視の一因だろう。


カルテット・アロドは2013年にパリで結成、チェロのサミー・ラシドが2021年に指揮者へ転向、ジェレミー・ガルバークに替わった。デビュー盤のメンデルスゾーンも鮮烈な演奏だったが、このハイドンはさらに解像度を上げている。録音は2024年10月27〜31日と2025年2月7〜11日、ドイツ・ノイマルクト市の歴史的ライトシュターデル祝祭ホールにおけるセッション。番号順に6曲を半分ずつ、2枚のディスクに収めた。


例えば作品76ー3ハ長調、《皇帝》の愛称で知られる作品の第2楽章は今日、ドイツ連邦共和国国歌としても有名な旋律の変奏曲だが、アロドはそうした歴史の〝あか〟をすっかり洗い落とし、純粋に美しく清新な音楽として再生する。《五度》《日の出》なども同様に新鮮に響く。モダン(現代)楽器による演奏だが、1770年代の弓の複製を用いるなどで時代様式にも適合させた。

(エラート=ワーナー ミュージック)


「芥川也寸志 傑作集」

チェロ=佐藤晴真※、ティンパニ=菅原淳※※、野平一郎指揮オーケストラ・ニッポニカ

舞踊組曲《蜘蛛の糸》、「チェロとオーケストラのためのコンチェルト・オスティナート」※、「証城寺の腹づつみ~オーケストラと狸のための~」※※、「交響曲 第1番」


2025年は第二次大戦直後の日本の作曲界をリードした芥川也寸志(1925ー1989)の生誕100年に当たった。日本人作曲家の埋もれた作品を掘り起こし、絶えず再評価の機会を設けてきたオーケストラ・ニッポニカが活動休止へと入る前、このように高水準のライヴ録音(2025年4月27日、日本製鉄紀尾井ホール)を残してくれたことに先ず、感謝のしたい。


《蜘蛛の糸》は父、芥川龍之介の小説に基づく1968年の作曲。プロコフィエフやバルトーク、ストラヴィンスキーの影響が色濃い初期作品(例えば最後に収められている「交響曲第1番」)に比べ、はるかに「現代音楽」の前衛性が際立つ。チェロ協奏曲は1969年初演、佐藤晴真の叙情的アプローチが素晴らしい。「証誠寺の腹づつみ」では打楽器のレジェンド、菅原淳も登場。野平の引き締まった指揮を通じ、今まで気づかなかった芥川の「顔」まで、しっかりと伝えている。

(妙音舎=販売:ナクソス・ジャパン)


ブクステフーデ「オルガン作品集」

オルガン=椎名雄一郎

Disc I

ハンブルク聖ヤコビ教会のシュニットガー・オルガン

1 前奏曲 ニ調 BuxWV140

2 今我ら聖霊に願う BuxWV208

3-7 われら神であるあなたを讃えん BuxWV218

8 われらが神は堅き砦 BuxWV184

9 カンツォーナ ハ調 BuxWV166

10 今ぞ喜べ、愛するキリストのともがらよ BuxWV210

11 今我ら聖霊に願う

12 今ぞわが魂よ主をたたえよ[I] BuxWV212

13 トッカータ へ調 BuxWV156

Disc II

ノルデン聖ルートゲリ教会のシュニットガー・オルガン

1 前奏曲 ト調 BuxWV148

2 天にましますわれらの父よ BuxWV219

3-5 今ぞわが魂よ主をたたえよ[II] BuxWV213

6 愚かなる者らの口、なめらかに語り出で BuxWV187

7 第1旋法によるマニフィカト[II] BuxWV204

8-9 第9旋法によるマニフィカト BuxWV205

10 今ぞわが魂よ主をたたえよ[IV] BuxWV21

11 前奏曲 ハ調 BuxWV138

12 来たれ聖霊、主なる神[I] BuxWV199

13 われ汝に呼ばわる、主イエス・キリストよ BuxWV196

14 第1旋法によるマニフィカト BuxWV203

15 主よ、われらに汝の言葉を守らせたまえ BuxWV185

16 前奏曲 ニ調 BuxWV139

(録音:ハンブルク(ドイツ)・聖ヤコビ教会 2024年8月29-31日/ノルデン(ドイツ)・聖ルートゲリ教会 2025年9月2-4日)


1705年、20歳の青年ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685ー1750)がアルンシュタットからリューベックまで約400kmの道を歩き、ディートリヒ・ブクステフーデ(ca.1637ー1707)のオルガン演奏を聴いた史実が逆に、ブクステフーデの評価を「大バッハの先駆者」程度に押し込めてしまったのは、歴史のいたずらかもしれない。生前のブクステフーデは北ドイツ・オルガン楽派を代表する作曲家であり、演奏家としても後のバッハに匹敵する「華麗なる鍵盤のヴィルトゥオーゾ」だったという。


椎名はハンブルクとドレスデンの教会に現存する2つのパイプオルガンを弾き分け、厳格な宗教音楽と華麗で即興的な世俗作品を交互に演奏することで「スター作曲家&鍵盤奏者」としてのブクステフーデ像を提示し、再評価を迫る。

(ALMコジマ録音)

 
 
 

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