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  • 執筆者の写真池田卓夫 Takuo Ikeda

慶應高校生ピアニスト2人のジョイント企画「D&F」(八木大輔&秋川風雅)


秋川(左)と八木(東京・北青山のスタインウェイ&サンズ東京で)

「アール・アンフィニ」レーベルを主宰するレコーディング・プロデューサー、武藤敏樹の主導による若手ピアニスト2人のジョイント企画「D&F」の試演会と記者会見が2022年1月5日、北青山のスタインウェイ&サンズ東京で行われた。ともに慶應義塾高等学校在学中の八木大輔(現在3年生)、秋川風雅(同2年生)が連弾や2台ピアノではなく、ソロで1枚のアルバム、1回のリサイタルをシェアする珍しい試みだ。2月23日にファーストアルバム「ザ・ヴィルトゥオーゾ」を発売、3月31日には東京・富ヶ谷のHakuju(白寿)ホールでリリース記念のリサイタルを開く。


5日のプレス向けイベントでは先ず、武藤が「音楽大学やその附属高校ではなく普通高校に在学している2人の組み合わせ」の妙について語った。次いで秋川がショパン「練習曲(エチュード)作品10ー4」とベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第23番《熱情》」第1楽章、八木がショパン「エチュード作品25ー6」とリスト「《ドン・ジョヴァンニ》の回想」を弾き、質疑応答の時間に移った。1歳違いで同じ高校に通うが、ストレートなパワーで際立つ秋川、音楽の「相」を様々な角度からじっくりと引き出す八木…と持ち味は全く違った。


テノール歌手(秋川雅史)を父、ピアノ教師を母に持つ秋川は早くからピアノだけでなく歌や指揮を学んできたが、「そこで得た全てをピアノにつぎ込んでいきたい」と考えている。八木は研究熱心な学究肌で、《ドン・ジョヴァンニ》の解釈を深める際、「リストがモーツァルトをどう引用し、自分の音楽としたのか。『ラ・チ・ダレーマ…(お手をどうぞ)』の部分ではドミンゴとバルトリの音源でオーケストラとドン・ジョヴァンニ、ツェルリーナの音の動きを追いながら音色やフレージングを考えました」と打ち明けた。秋川の八木評は「ものすごい勉強家で、いつも音楽の知識に圧倒され、尊敬しています。僕はもっぱら聞き役ですが、八木さんの話が、もっと勉強するきっかけになることも多いです」。逆に八木は「秋川君の演奏はまさに、推進力です。自分は音を聴き過ぎてだんだん遅くなり、しまいには止まりそうになってしまいます。連弾で録音したラフマニノフの《イタリアン・ポルカ》では秋川君の好リードにより、止まらないで済みました」と、秋川の美点を指摘した。


2人とも音楽大学へは進まず慶應義塾大学への進学を考えている。秋川は「池上彰さんの報道番組に感化され、政治経済や法律の重要性に目覚めました」といい、法学部志望。八木は「音楽学にとどまらず、仏伊独露西…と英語以外の言語を修めたい」との理由から、文学部の美学専攻を目指す。一般大学を卒業した後は国内、国外の音楽専門教育機関でプロのピアニストとしての腕に磨きをかけるつもり。私たちは、まだ初々しい高校生時代からの音源と実演に継続して触れつつ、次第に成長していくプロセスを同時体験する楽しみを授かった。


※D&Fのプロフィール


八木大輔

2003年神奈川県生まれ。4歳より藤井麻衣子、6歳より石井理恵の両氏に手ほどきを受け、現在は黒田亜樹、藤井一興の各氏に師事。またタチアナ・ゼリクマン、ドミトリー・バシキーロフの各氏にも指導を受ける。2017年5月、第7回ピアノタレント国際コンクールにて大賞および聴衆賞 受賞。同年10月の第30回ポッツォーリ国際ピアノコンクールにおいて第3位、13歳で史上最年少入賞を果たす。2018年3月、第4回スタインウェイコンクールin Japanにて大賞および聴衆賞受賞。同年5月、チッタ・ディ・カントゥ国際ピアノ協奏曲コンクール古典派部門で第1位(最年少受賞)併せてベートーヴェン賞受賞。2019年6月、アンドレア・バルディ国際ピアノコンクールにて、史上最年少の第1位受賞。


秋川風雅

2004年東京都生まれ。3歳から毎年、Hakujuホールでソロリサイタルを開催。6歳で日本フィルハーモニー交響楽団と共演(モーツァルト「ピアノと管弦楽のためのコンサート・ロンド」)。12歳で東京交響楽団とショパン「ピアノ協奏曲第1番」を弾いた同じ演奏会でベートーヴェン「交響曲第7番」を指揮。ニッポンシンフォニーとは13歳でラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番」、14歳でチャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」を共演。国際コンクール「チャンピオンズ・キーボード」(イタリア)でベートーヴェン部門第1位、ホロヴィッツ・コンクール(ハンガリー)でフェリックス・ブルーメンフェルト記念賞(大会最高位賞)を得た。ピアノを両親、小島さやか氏、声楽を父の秋川雅史、指揮法を鈴木織衛氏、作曲法を古川琴子氏に学ぶ。

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