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山崎浩太郎「巨匠指揮者列伝」読了!

  • 執筆者の写真: 池田卓夫 Takuo Ikeda
    池田卓夫 Takuo Ikeda
  • 1 分前
  • 読了時間: 3分
久々に王道の演奏史譚
久々に王道の演奏史譚

早稲田大学の音楽鑑賞サークル「音楽同攻会」は戦時中、「好」が頽廃的でけしからんという理由から「攻」に改名した歴史を持つほどに古い団体だ。卒業生には向坂正久さん(津田ホール支配人)ら故人から現役最長老の東条碩夫さん、オペラの石戸谷結子さん、私…と執筆者として音楽業界に残った人も多い。山崎浩太郎さんもその1人で私の4学年下、つまり私が卒業した年に新入生として現れたので在学期間は重ならない。俳優からオペラ演出に転じ、残念ながら早逝した三谷礼二さんの周りに集う学生グループと私が親しくしていた縁でいつしか山崎さんとも面識ができた。ライターとして「演奏史譚」を名乗り、レコード芸術全盛期の名演奏家、名プロデューサーの足跡を詳しく追い、メジャー・レーベル以外の音源も丹念に収拾して人物像、音楽観の本質に迫る手法で高い評価と人気を得た。私が「日本経済新聞」の音楽担当編集委員を務め、夕刊の演奏会批評執筆者の世代交代期にさしかかった時、迷わず山崎さんと江藤光紀さんを指名、お2人は私の退職後も健筆をふるわれている。


その山崎さんが「モーストリー・クラシック」誌に2009年6月号から23年3月号まで連載した「巨匠『名盤』列伝」の中から85人を選び、小澤征爾とエットーレ・パニッツァ、ルネ・レイボヴィッツの3人を加え、大幅に加筆や書き替えを施し「名盤でたどる88人」のマエストロを五十音順の上下2巻「巨匠指揮者列伝」にまとめ、音楽之友社から出版した。


とにかく、面白い。5歳の年齢差があるとはいえ、ほぼ同じ時代にクラシック音楽の魔力に取り憑かれ、一生を捧げてしまった共通点は恐ろしいほどの共感として作用するようだ。レコード店員のアルバイトを通じ、一般メディアに登場しない指揮者たちの隠れた名演を発掘する密かな楽しみを覚えてしまったのも同じ。でも、ここからが絶対に違うのだが、どこまでも愛情豊かに共感し、読むエンターテインメントの醍醐味を味わわせてくれるのは、山崎さんにしかないスペシャリティーである。私の場合どうしても新聞記者、しかも企業経営や株式市場の取材で基礎を固めた経歴が災い?、事実関係の確認にこだわるあまりに文章が硬くなり(読みづらい)、エモーショナルな共感を妨げてしまう。山崎さんの文章に読み耽るのは、もちろん1人の音楽ファンとしての強い共感からだが、どこかでちょっと羨望あるいは嫉妬のような感覚のもあるのではないかしら? もちろん「こう書けたらなあ」と、謙虚にお手本とする気持ちの方が強いのだけど。とにかく、おすすめの名著です。


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