ヘフリガー「草津の夏」の新しい顔に
- 池田卓夫 Takuo Ikeda

- 4 分前
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1980年に始まった日本の夏の音楽祭の草分け、草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァルは今年(2026年)、第46回の開催に先立ってスイスのルツェルン音楽祭の元芸術監督ミヒャエル・ヘフリガー氏をアーティスティック・アドヴァイザーに迎えた(4月1日付)。実父のテノール歌手、エルンスト・ヘフリガー(1919ー2007)は1983年の第4回から2004年の第25回まで「草津の夏」に現れ、演奏とマスタークラス指導の両面で活躍、山田耕筰らが作曲した日本歌曲のドイツ語翻訳版を創唱し、ディスクを通じて世界に広めたことでも知られる。父の草津デビュー(64歳)とほぼ同年齢(65歳)で仕事を始めるミヒャエル氏。ヨーロッパへ戻る当日の貴重な時間をさき、日本人記者との懇親の場を設けた。
ヘフリガー氏はジュリアード音楽院でヴァイオリンを修めた後、母国スイスのザンクトガレン大学でMBA(経営学修士)を取得、活動の比重を演奏家から徐々に音楽祭のプロデュースやマネジメントへと移し、1999年から2025年までルツェルン音楽祭のエグゼクティヴ・プロデューサーを務めた。
「若い音楽家の積極的起用と同時代の音楽の紹介に力を入れ、細川俊夫を招いたり、ブラームスの室内楽の前半い笙の宮田まゆみの演奏を置いたりもしました。2006年にはクラウディオ・アバド指揮ルツェルン祝祭管弦楽団の日本公演も成功させましたが、日本は5年後に東日本大震災の大被災に遭遇します。ルツェルン音楽祭では日本のkajimoto(旧梶本音楽事務所)、世界的建築家の磯崎新氏と英国人彫刻家のアニッシュ・カプーア氏とともに500人収容の移動式コンサートホール《アーク・ノヴァ(新しい方舟)》をしつらえて松島、仙台、福島などを回り、ようやく昨年、ルツェルンで使いました。日本で提供したのは弦楽四重奏をはじめとする室内楽だけでなく尺八、ヨガ、ジャズなど多岐にわたるコンテンツです。アーク・ノヴァではクラシックを背景としつつも、すべての人々に向かって扉を開いた多元主義を実践しましたが、それは草津での私の仕事の基盤ともなります」
1990年代に父が傾倒した「日本の歌をうたう」シリーズのディスク制作にも関わった。
「最初は『なぜ?』と疑問に思いました。でも、今は理解しています。日本の歌がドイツ語で歌われた瞬間、それはドイツ・リートの一角に組み込まれ、世界の歌曲となるのです。『赤とんぼ』がシューベルトの『美しい水車屋の娘』や『冬の旅』に肩を並べるという父のヴィジョンに、私は強く惹かれました。後に細川俊夫をルツェルンのコンポーザー・イン・レジデンスに招いたのも、父との共同作業をきっかけに深めてきた考え方の実践です」

具体的展開は「来年以降のお楽しみ」で「今はまだ脇役、1人でも多くの人と今年夏、草津で出会うことを楽しみにしています」と語るが、すでに新企画を1つ、打ち出した。音楽祭の開催場所を従来の群馬県草津町の「草津音楽の森国際コンサートホール」だけでなく同県高崎市の「高崎芸術劇場」大劇場、隣接する長野県軽井沢町の「軽井沢大賀ホール」の3か所に拡大、「Three Mountains Projekt(三山企画)」と名付け、広域連携を深めていく。
「私の人生において、3つの火山を有する地域での仕事は初めてです。美しい自然の中で、音楽が果たす役割をコンサート、マスタークラスの両面から究めます。マスタークラスも先生と生徒の内輪で終わらせず、多くの人々が楽しめるコンテンツとすべきです。私はまず、草津のアインデンティティーを注意深く見極めながら強化し、日本で最高の音楽祭に高め、こちらではなくルツェルンやザルツブルクの方から『何か一緒にできませんか?』と申し入れが来るような状態にまで導くのが理想です。宿泊や旅行の業界とのパートナーシップも強め、『3つの山』地域全体の活性化を目指します」
2026年の第46回草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァルの会期は8月17〜31日、テーマは第1回への原点回帰の願いも込め、「バッハと涼もう」とした。
詳しくはホームページ https://kusa2.jp/
(2026年6月24日、東京・虎ノ門のホテルオークラで)



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