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  • 執筆者の写真池田卓夫 Takuo Ikeda

第22回大阪国際音楽コンクールが終了

更新日:2021年10月21日


2021年10月11日、高槻現代劇場の表彰式の受賞者と審査員

第22回大阪国際音楽コンクールの部門別本選が2021年10月2−10日、大阪府内と兵庫県内で開かれた。11日の高槻現代劇場では主要部門第1位を集め、全部門総合の最高位=グランプリを選ぶ「グランドファイナル=ガラコンサート」と表彰式、8日には兵庫県立芸術文化センター神戸女学院小ホールで「審査員によるチャリティーコンサート」も行った。私はグランドファイナルの審査と表彰式の司会を2年ぶりに務めた。


今年も昨年に続き、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)世界拡大の影響により、日本国外での審査、国外在住のコンテスタント(受験者)と審査員大半の参加が見送られた。日本人中心の受験、外国人審査員の多くも日本在住という変則的開催にもかかわらず、参加者の水準は高かった。最初のテープ審査から数え、2,954人が参加した。グランドファイナルを担当する審査員は20人・組の過半数(今年の場合は15人審査につき、8票以上)を得た者がグランプリを得る仕組みだが、それぞれに優れた演奏が続いて票が割れ、グランプリを残念ながら出せなかった。



グランドファイナル参加者に与えられた賞を列挙する。文部科学大臣賞はニューヨークのマネス音楽院卒業の加藤菜子(メゾソプラノ)。大阪府知事賞は桐朋学園大学3年の水越菜生(ヴァイオリン)、北野蓉子実行委員長による実行委員長賞は加藤と桐朋女子高校2年の小森桃子(ハープ)、東京・国立市立国立第三小学校6年の石川美音(同)、ヘンレ賞は神戸大学卒業の森重美千香(ピアノ)と水越、サヴァリッシュ賞は東京藝術大学2年の下宮万弦(ヴァイオリン)、セシリア国際音楽コンクール賞は水越と名古屋市立菊里高校2年の後藤美優(ピアノ)、日本室内楽ピアノコンクール賞は渋谷教育学園幕張中学校2年の深津天馬(ピアノ)、プッチーニ賞は後藤、ジャーナリスト賞はアンサンブル・ノアールの赤星佳穂(相愛大学4年=フルート)、川人加奈(フルート=相愛大学3年)、西川ひかり(ピアノ=相愛大学大学院修了)、兵庫県知事賞は梅花中学校3年の森本安音(ミュージカルコース)、大阪市長賞は後藤、高槻市長賞はエリザベト音楽大学2年の豊田日乃(ソプラノ)、アルソ賞は名古屋市立駒方中学校2年の濱田紗瑛(フルート)、音楽現代賞は東京音楽大学大学院1年の瀬頭薫(ピアノ)、オーディエンス賞は水越に、それぞれ与えられた。


クラシック音楽のコンクールということで欧米の作品が多数を占めるなか、アンサンブル・ノアールが矢代秋雄の「2本のフルートとピアノのためのソナタ」、瀬頭薫が三善晃の「ピアノ・ソナタ」を選んだセンスは評価に値した。コンクール狙いの派手で技巧的な作品(バラキレフ「イスラメイ」やフバイ「カルメン幻想曲」、あるいはプロコフィエフの「ピアノ・ソナタ」など)は案外、多くの人々の耳にも焼き付いていて、よほど傑出した演奏でない限り、良い成績を収めるのは逆に難しいのではないか。コロナ禍で有観客での演奏機会や国外への留学も満足にできないなか、コンテスタントたちがしっかりと自身の音楽性と作品の真価を見つめ、普通のコンサートとして感動できる水準の演奏を披露したのが、第22回大阪国際音楽コンクール・グランドファイナルの大きな収穫だった。

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