top of page
  • 執筆者の写真池田卓夫 Takuo Ikeda

ヴァイグレ指揮&トーマ演出のフランクフルト「トリスタン」に感じた室内楽美


©️Barbara Aumüller

4年間の駐在員生活中に通いつめ、「音楽の友」誌の「ドイツ便り」に多くのレビューを載せたフランクフルト市立劇場オペラ(Oper Frankfurt)の上演を28年ぶりに観た。ドイツの若手女性演出家カタリーナ・トーマの演出、オペラ音楽総監督(GMD)で読売日本交響楽団常任指揮者を兼ねるセバスティアン・ヴァイグレの指揮によるワーグナー「トリスタンとイゾルデ」の新演出、2020年1月19日の初日に駆けつけた。劇場のアンサンブルから実績を積み上げ的確に言葉を語るヴィンチェント・ヴォルフシュタイナーのトリスタン、スレンダーな美人で繊細な歌唱に徹するラッシェル・ナイコールズのイゾルデ、新国立劇場にも出演歴のあるアンドレアス・バウアー・カナバスのマルケ王、日本でもおなじみのクラウディア・マーンケのブランゲーネ…と飛び切りのスター歌手はいない半面、アンサンブルの求心力が素晴らしく、指揮者と演出家の意図した室内楽的に濃密な人間感情の表現世界を見事に体現した。オーケストラの充実も30年前とは雲泥の差で、すでに12年に及ぶヴァイグレとの共同作業の成果は明らかだった。詳しくは月刊「読響」「音楽の友」に書く予定。


個人的にはフランクフルトに到着早々、左脚下部の腫れと激痛、発熱に見舞われ、一時はエコノミークラス症候群を疑った。翌日も症状は改善せず、大詰めの「イゾルデ愛の死」を聴きながら「ああ、自分もかつて暮らした異国の地で果てるのか」と嘆いてはみたが、まだ死にたくはないので終演後に大学病院の夜間緊急外来、さらにそこからの紹介で別病院に行って1晩の検査入院、ドイツで入院するのは初めての体験だった。結果、血栓は発見されず、足の傷口から菌が入った丹毒=Erysipelだと判明。ペニシリン10日間服用の処方箋をいただき、退院した。ヴァイグレのインタビュー定刻の午後3時に間に合い開口一番、「昨夜の終演から今日の昼過ぎまで、入院していた」と告げたら、ひどく驚かれた。作品が作品だもの。

閲覧数:411回0件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page