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  • 執筆者の写真池田卓夫 Takuo Ikeda

チェロの竹花加奈子が自作のみリサイタル、ピアノ・ソロ作品ではピアノも披露


演奏の合間に解説トークも

チェロをプロのソリストとして弾きこなすだけでも大変なはずなのに、竹花加奈子は作曲もピアノ演奏も交えつつ、独自の境地を切り拓いてきた。和服の着こなしで知られ、チェロと一緒の写真も多いが、2022年3月9日、ルーテル市ヶ谷ホールの「音の環 vol.002」と題した自作のみのコンサートでは2種類のドレス姿だった。デュオのピアノは桐朋女子高校時代からの友人、網野ひかりが担当したが、ピアノ独奏曲「3つのポエム」は竹花自身が弾いた。ちょっと素人ぽかったのはトークだけで、チェロはもちろん、ピアノ演奏、作品のクオリティとも一定水準をクリアし、独自の多彩な表現世界を印象づけた。


前半では耳鼻科医で、音楽をはじめとするチェコ文化研究にも大きな足跡を残した関根日出男先生(1929ー2007)を追悼した「チェロ・ソナタ第2番《径》」に最も感銘を受けた。3楽章構成でチェコの空気、関根先生が訪ねた世界各地、追悼のコラールそれぞれの径(みち)を象徴。生前のお姿をふと、思い出した。網野のピアノも竹花と長年共演、デュオの息がぴったり合う以上の積極的な〝参加〟を感じさせ、堅固な打鍵が深い味わいを醸し出す。


後半は12曲の小品を連ねた「音絵巻《源氏物語》」。デュオだけでなくチェロ、ピアノそれぞれのソロも交え、登場人物のキャラクターを描き分ける。中でも、無伴奏チェロの第9曲《六条御息所》で燃え上がる激しい情念に、息をのんだ。自身の奏法や音楽性を前提にした作曲は前衛ではなく、むしろロマンティックな味わいに富むが、ヒーリング系の耳に優しいだけの音楽には決してとどまらず、絶えず何かの「声」を探すかの執念が耳を惹きつける。


アンコールは竹花がピアノ・パートを編曲したサン=サーンス《白鳥》と、無伴奏チェロでカタルーニャ民謡の《鳥の歌》。平和への願いを象徴する作品で「音の環」を閉じた。

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