• 池田卓夫 Takuo Ikeda

藤田姉妹のチェロ&ピアノ、確かな品性

更新日:2020年12月9日


聴きながら暗い手元で数分以内に描きとった雰囲気。緊密なデュオだ。

ピアノのめぐみ、ヴァイオリンのありさ、チェロのほのかの藤田家三姉妹による三重奏団「フジタ・ピアノ・トリオ」は根強いファンを持つ。ヴァイオリン以外の2人、めぐみとほのかによる2020年12月8日、豊洲シビックセンターでの「アフタヌーン・コンサート」は平日昼下がり(午後3時開演)、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策を優先した休憩なし1時間の変則的な開催にもかかわらず、少なからずの聴き手を集めた。


めぐみのソロでベートーヴェンの「ピアノ・ソナタ第30番」、ショパンの「マズルカ第15番」、ほのかとのデュオでラフマニノフの長大な「チェロ・ソナタ」。アンコールには名曲中の名曲、サン=サーンスの「白鳥」が用意されていた。トリオ演奏のときと同じく、室内楽にもかかわらず、ピアニスト、チェリストとも暗譜で演奏する。


以前にも書いたが、めぐみのピアノは自然現象のように、人に優しく響く。豊洲に持ち込んだカワイ製グランドピアノSK-EXも藤田の手にかかると、アルペジオがハープを思わせる優雅な響きを放つ。ベートーヴェンのソナタはかみしめるように祈りをこめて弾き、ショパンにも独特のアロマが漂っていた。2曲とも、弱音で終わるのが印象的だった。


ラフマニノフのソナタは技巧的に難しい上、演奏時間40分に及ぶ大作だから難易度が高い。藤田姉妹はそれぞれが高い水準で安定したテクニックが拮抗し、緊密なデュオを繰り広げていた。温かくふくよかなチェロ、どんなフォルテッシモでも濁らず艶やかなピアノ。これほど暖色系の雰囲気で一貫したラフマニノフは珍しく、とりわけ第3楽章の抒情美は傑出していた。アンコールに至るまで、品性確かな演奏姿勢にも魅了された。


明けて2021年1月28日には同じプログラムを再度、ティアラこうとうホールでも聴ける。


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