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  • 執筆者の写真池田卓夫 Takuo Ikeda

友情と信頼のバッハ〜豊嶋&中野デュオ


「東京・春・音楽祭2019」の「東博でバッハvol.42」、ヴァイオリンの豊嶋泰嗣とチェンバロの中野振一郎によるJ・S・バッハ「ヴァオリンとチェンバロのためのソナタBWV1014~1019」全6曲を2019年3月20日、上野公園の東京国立博物館平成館ラウンジで聴いた。2人は桐朋学園大学音楽学部の同学年で3月生まれどうし、20日は中野55歳の誕生日でもあった。本人は「50過ぎのおっさん2人のバッハ」と語っていたが、長年の友情がプロフェッショナルな演奏家としての信頼関係の基盤にあり、安定感抜群のデュオだった。


片や国内いくつかのオーケストラのコンサートマスター、片やピリオド楽器のソリストということで、卒業後の共演機会はチェンバロが通奏低音として合奏団の一角に加わる場合などに限られていた。2016年秋、Hakujuホールで豊嶋としてはまれな「オール・バロック」のリサイタルを開いたとき、中野をパートナーに指名したのが最初の本格共演だった。18世紀音楽のスペシャリストの強固な支えを得て安心するのか、豊嶋は盤石のコンサートマスターの場面では見せない人間味を全開、すでに手の内に入っている楽曲や楽章と、おっかなびっくりとの部分を正直にさらけ出す。今回のバッハでも2人が丁々発止の会話を繰り広げるというよりは、中野の設定した舞台の上で豊嶋が自由に動き回る趣き。「第1番ロ短調」第1楽章アダージョは緊張のあまりか、ヴァイオリンが全く鳴らずに心配したが、すぐに調子を取り戻し、ホッとした。繰り返しは基本省いて6曲を2時間以内に収めつつ、屈指の名曲である「第4番ハ短調」では繰り返しを実行し、たっぷり聴かせるなど臨機応変だった。



2つの建物の間の奥が平成館。まさにナイト・ミュージアム!

東京国立博物館がミューゼアムコンサートを解禁した10数年前から何度か、MC(司会・解説者)として出演したことがある。当時は試行錯誤の連続だったが、今や「東京・春・音楽祭」の一角で確かな存在感を発揮、大勢の聴衆を動員できるようになったのは素晴らしい。

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