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  • 池田卓夫 Takuo Ikeda

MIDORI&ティボーデ・葵トリオ・角野隼斗&オールソップ指揮ポーランドRSO

更新日:5 日前

クラシックディスク・今月の3点(2022年12月)


ベートーヴェン「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ全集(第1ー10番)

五嶋みどり(MIDORI=ヴァイオリン)、ジャン=イヴ・ティボーデ(ピアノ)

日本でも同じコンビの全曲演奏会が11月にあったが、私自身は聴けなかった。その渇を一気にいやす。セッション録音はロサンゼルスで2022年1月と5−6月の2度に分けて行われた。過去のMIDORIリサイタルはいかにも「伴奏ピアニスト」という感じのピアニストと行われることが多かったので第一級のヴィルトゥオーゾ(名手)、ティボーデ起用には驚いた。1961年リヨン生まれ、19歳で第1回日本国際音楽コンクールで1位なしの2位を得た副賞でラルフ・ワイケルト指揮NHK交響楽団と共演、「皇帝」(ピアノ協奏曲第5番)を弾いた時、当時の長老評論家がFM生中継で「フランス人なのに何故いきなりベートーヴェンなのでしょうね」と言い放った。国籍で音楽のレパートリーを論じる風潮の強かった当時、いかにも「あるある」の話だが、ティボーデの母親がドイツ人と知らないのは迂闊だった。


還暦(60歳)に至ったティボーデのピアノはベートーヴェンの音楽が内包する豊かな表情の数々を余すところなく引き出し、ストイックに楽曲の核心に迫る五嶋のヴァイオリンの一段の輝きを与える。音楽史における「ヴァイオリン・ソナタ」のバランス変化にも即したコラボレーションであり、作品30(第6ー8番)以降の後半作品における表現語彙(ヴォキャブラリー)の豊かさ、とりわけ巧まざるユーモアの表出に2人の円熟境を強く感じた。SACDとCDのハイブリッド盤。

(ワーナーミュージック)


マルティヌー「ピアノ三重奏曲第1番」/ドヴォルザーク「同第3番」

葵トリオ(ヴァイオリン=小川響子、チェロ=伊東裕、ピアノ=秋元孝介)

ドイツ「ヘンスラー」レーベルとの契約第1作。2022年2月16、17、18日にイタリア南チロル・レングモースのペーター・マイヤー・ザールでセッションを組んだ。2021年12月、川瀬賢太郎指揮名古屋フィルハーモニー交響楽団定期演奏会でイタリア近代の作曲家、アルフレード・カゼッラの「ピアノ、ヴァイオリン、チェロのための三重協奏曲」を共演、アンコールに一転、ハイドンのトリオからの1楽章を弾いた時にも思ったが、葵トリオのレパートリー選択ではつねに、古典とモダンの対比が考慮されているのではないだろうか?


今回の新譜も「チェコ・アルバム」の一体感の一方で1883年作曲のドヴォルザーク、1930年作曲のマルティヌーを鮮やかに描き分けている。結成から一定の時間が経過、伊東が東京都交響楽団の首席奏者に就いたのをはじめ、3人それぞれのキャリアが多忙を極める中でもトリオ活動を続け、より柔軟なアンサンブルで多彩なニュアンスを描き分ける進化をみせているのが頼もしい。

(ヘンスラー)




ショパン「ピアノ協奏曲第1番」

+ボーナストラック:角野j隼斗「胎動 New Birth」「追憶 Recollection」

角野隼斗(ピアノ)、マリン・オルソップ指揮ポーランド国立放送交響楽団

2022年9月の日本ツアー3日目に当たった10日、大阪のザ・シンフォニーホールでの演奏をそのまま収録、ショパンに想を得た角野の自作小品2つをボーナストラックに加えた。9月8日に東京・サントリーホールの演奏を聴いた私は、当HPに「決して弾き急がず、時には聴こえなくなる寸前まで音量を絞り、弱音の側から音楽を組み立てていく姿勢で『角野ワールド』の魅力を全開させた。オルソップもソリストの世界を尊重、息のぴったり合った管弦楽で応えた」とのレヴューを記した。


ヴァイオリン出身のオールソップ自身、若い頃はジャズを演奏した経験があり、角野のクロスオーバーな音楽性を高く評価。2022年のヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクールでは審査委員長を務めながら、セミファイナルとファイナルの協奏曲の指揮も自らかって出るなど、若い才能を支援する姿勢でも徹底している。角野との共演も日を追うごとに目覚ましく密度を高めていったであろう痕跡は、東京よりさらに洗練された大阪の演奏でも明らかだ。カトヴィツェに本拠を置くオーケストラは放送交響楽団としての機能性を備えつつも、基本には東欧の鄙びた響きがあり、ショパンの管弦楽を深い共感とともに再現する。オールソップの指揮はモダンな感覚のピアノ、ローカルな音色のオーケストラの共演の妙を適確に際立たせていく。

(e+music)




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