2022年2月28日、東京文化会館小ホールの「2022都民芸術フェスティバル」参加公演、日本演奏連盟主催「室内楽シリーズ」のNo.21は「デュオの世界《ピアノ・デュオ》」。前回No.20は竹澤恭子(ヴァイオリン)と江口玲(ピアノ)の2人が1晩を仕切ったが、今回は前半が中堅世代のドゥオール(藤井隆史&白水芳枝)、後半が大家の域に至った寺田悦子&渡邉規久雄と、世代やキャリアを異にする夫婦デュオ2組が分担するジョイント・コンサートの体裁で、異彩を放った。2組には世代だけでなく、デュオ活動に専念するドゥオール、それぞれがソロでも積極的に活動する寺田&渡邊という違いもある。1人1人が自分の楽器で臨む弦楽器や管楽器と異なり、ピアノは簡単に携えられないので基本はホール備え付け、ましてや前半と後半で計4台の楽器を入れ替える手間やコストは半端なく、あまり現実的ではない。今回もホール備え付けのスタインウェー2台を同じセッティングで並べたまま、2組が共用した。音楽コンクールに似た状況が生まれ、両者の音楽性や力量を聴き比べる意地悪な?機会ともなった。
プログラムは画像に転載した通り。ラヴェルとディアギレフを軸にフランスとロシアのバレエ音楽、ダンスを共有項にバーンスタイン…と、単なる顔見せ公演で終わらせない配慮がなされ、充実した聴後感を残した。ちょうどスピルバーグ版映画が封切られたばかりの《ウェスト・サイド・ストーリー》ではドゥオールが足踏み、ホイッスルも交え、劇場的感興を盛り上げた。長く4手連弾、2台ピアノで独自の表現領域を究めてきたユニットの緻密なアンサンブル、一体感はいつ聴いても、新しい発見がある。一方、すでに同じストラヴィンスキーのバレエ音楽、《春の祭典》の名盤(オクタヴィア)をリリースしている寺田&渡邉の《ペトルーシュカ》は揺るぎなく、ライヴならではのグルーヴ感、スリルも申し分ない。豊かな厚みを伴った音のソノリティー、敢えて異質のタッチを重ねて醸し出す和声の妙などにおいて、一日の長があるといえた。
「2組で1つの世界」を描いた素敵な1夜の締めくくりは第1ピアノを寺田&渡邉夫妻、第2ピアノをドゥオールがそれぞれ4手連弾した2台8手による、ドビュッシー《小組曲》の第1曲《小舟にて》。柔らかく美しく平和に満ちた響きが殺伐とした世界に、一瞬のオアシスを描き出した。
Comments