音楽監督の飯森範親が指揮するパシフィックフィルハーモニア東京(PPT)の第152回定期演奏会を2022年10月4日、サントリーホールで聴いた。前半が1971年生まれのトーマス・アデスの「ピアノとオーケストラのための協奏曲」(2019)日本初演、後半が1874年生まれ(1934年没)のグスターヴ・ホルストの代表作「組曲《惑星》」(1918)。改めて考えれば、1世紀を隔てたイギリス音楽2曲のすっきりしたプログラミング。来日ツアー中のサー・サイモン・ラトル指揮ロンドン交響楽団の向こうを張る?心意気があっぱれだ。
自身もヴィルトゥオーゾ級のピアノの腕前を持つアデス。「ピアノ協奏曲」はいったんジャズを目指して米国に渡り、再びクラシックに帰依したベルリン在住のロシア人ピアニスト、藤田真央の先生でもあるキリル・ゲルシュタインのために書かれたため、かなりポップな印象の作品だ。クラシックの鍵盤テクニックをベースにジャズ、ポップスなどのフレーバーも効かせた作品の日本初演者として、「かてぃん」こと角野隼斗は最適の人選だった。1か月前、同じホールでマリン・オールソップ指揮ポーランド国立放送交響楽団とショパンの「ピアノ協奏曲第1番」を弾いた時と同じように大勢の女性ファンが集まり、後半のオーケストラだけの演奏にもスタンディングで感激を伝える。驚いたことに、ショパンとアデスで全く異なる音色をつくり、鋭さとノリの良さで日本初演のミッションを高い次元で成功させた。アンコールのガーシュイン(I got Rythm)では、PPTの楽員も体を揺すり、楽しそう。
照明効果を交え、長大な作品をリラックスして聴けるように配慮した「惑星」の最後(海王星)には、女声合唱(東京混声合唱団)もちゃんと加わった。近現代の管弦楽曲を指揮する飯森の精彩、切れ味には以前から定評があるが、最近は恰幅も良くなった。PPTとは音楽監督就任(2022年4月)の1年前から関係を深め、水準向上に努めてきた。単にゴージャスなサウンドの厚みだけでなく、個々のソロの冴えや弦の音色でも傾聴に値するアンサンブルとなりつつある実態が、「惑星」には、はっきりと現れていた。
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