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  • 執筆者の写真池田卓夫 Takuo Ikeda

諏訪内&ボジャノフ・辻&阪田・トリスターノ・チェリビダッケ&ミュンヘン

クラシックディスク・今月の3点(2024年6月)


諏訪内vs辻のブラームス競演

日本人女性ヴァイオリン奏者2人のブラームス「ヴァイオリン・ソナタ」全曲(第1〜3番)が偶然にも、ほぼ同時にリリースされた。ユニバーサル ミュージック「Decca」レーベルからは諏訪内晶子とブルガリア出身の鬼才ピアニスト、エフゲニ・ボジャノフのデュオで「ピアノとヴァイオリンのための」と表記(2023年10月3〜5日、ドイツ・デュッセルドルフのクンストパラスト、ロベルト・シューマン・ザールでセッション録音)、ソニーミュージックレーベルスからは辻彩奈と阪田知樹のデュオで「ヴァイオリンとピアノのための」と表記(2023年4月17〜19日、群馬県の昌賢学園まえばしホール大ホールでセッション録音)、後者にはパラディスの「シチリアーノ」がボーナストラックのように収められている。


ヴァイオリニスト2人の年齢差は25歳。諏訪内はアメリカからヨーロッパへ渡りベルリン芸術大学で学んでいた時期、担当教授に「ブラームスを弾くには同じ作曲家のリート(ドイツ語歌曲)を理解しなければならない」と諭され、最初は半信半疑で受講した歌のレッスンが「今はすごく役に立っている」という。第1番の副題にもなった《雨の歌》だけでなく、ブラームスのヴァイオリン・ソナタには自作歌曲からの引用が数多く散りばめられている。諏訪内の演奏は脱力が行き届き、ボジャノフの時折グレン・グールドを彷彿とさせる独特のピアニズムと微に入り細に穿つ会話を繰り広げる。


対する辻は持ち前のクール&ビューティーな美意識と20代の直球勝負がうまく噛み合い、未来志向のブラームスを奏でる。作曲家としても活動する阪田のピアノは和声や構造の視点が確かで、デュオを一段と立体感のあるものに仕上げている。


J・S・バッハ「フランス組曲」全曲(第1〜6番BWV.812〜817)

フランチェスコ・トリスターノ(ピアノ)

自主レーベル「Intothefuture」を立ち上げ、バッハの鍵盤作品全曲録音に乗り出したフランチェスコの第2作。録音は第1作の「イギリス組曲」より先で、2024年のパリで行われた。極めて精密に作品を織りなす音の綾、舞曲の特質を再現しつつ、碩学的(ペダンティック)な感触は一切なく、しなやかさ、軽やかさ、さらにグルーヴ感が前面に出る美点はここでも傑出している。

(キングインターナショナル)


フランク「交響曲ニ短調」/ドビュッシー「夜想曲」※

セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、同合唱団女声団員(合唱指揮=ヨーゼフ・シュミットフーバー)※

フランクは1991年9月27〜29日のガスタイク、ドビュッシーは1983年7月6日のヘルクレスザールと、ともにドイツ・ミュンヘン市内で行われた演奏会をバイエルン放送協会が収録したライヴ録音だが、ポイントは8年の時間差にある。ドビュッシーの「夜想曲」は1970年代末に読売日本交響楽団への客演でも指揮した十八番。1980年代前半にはまだ鮮やかに弾けるリズムと色彩感が強烈だった。フランクは亡くなる5年前の演奏で、あの極端に遅いブルックナーと同じ時期に当た流。フランクのテンポはそれほど遅くないが、1つ1つの音の線を細かく浮かび上がらせながら積み重ね、味わい深く紡いでいく手法ではブルックナーにも一脈通じるユニークなフランクの解釈が聴ける。

(ワーナーミュージック)


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