• 池田卓夫 Takuo Ikeda

札幌名花・大平まゆみを高田馬場で聴く


長く全国の音楽ファンに愛されたチェコの名指揮者ラドミル・エリシュカ最後の来日公演、札幌交響楽団(札響)との告別演奏会のライヴ録音が出た直後のタイミングでコンサートマスターの1人、大平まゆみが東京・高田馬場の「カフェ・コットンクラブ」www.cafecottonclub.com に現れ、無伴奏ヴァイオリンのディナーコンサートを開いた。


ピアノもPAもなしでエルガーの「愛の挨拶」を弾きながら客席を回り、ステージに着くとJ・S・バッハの無伴奏(「パルティータ第3番」から3つの舞曲)を鮮やかに奏でた。客席には仙台市で過ごした少女時代の同級生も何人かいて、ともに在籍した小学校の校歌も弾けば、現在の本拠である北海道にちなんだメドレー(「北の国から」「知床旅情」「虹と雪のバラード」)も。さらに母との思い出の曲というヴォルザークの「ユモレスク」から、自身のサロンコンサートの定番であるサラサーテ「ツィゴイネルヴァイゼン」、モンティ「チャールダーシュ」まで、きりっと引き締まった美音、正確な音程、心に触れるトークで客席を魅了した。これまでコンサートマスターの仕事ぶりしか接したことがなかったが、少数のお客様を前に胸襟を開き、ヴァイオリン音楽の魅力を語り、一心に奏でる姿にはまた、別の輝きがあった。聞けば札幌では地下鉄のホームでも無伴奏ライヴを敢行、札響のPRに努めているというから、この親密な語りかけ、実は筋金入りの芸人魂の賜物である。

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