今月のパフォーマンス・サマリー(2023年10月)
1日昼 新国立劇場「修道女アンジェリカ」/「子どもと魔法」(オペラハウス)🌟
1日夜 「マリア・カラスの生涯」(東京文化会館小ホール)
3日 柴田智子(Sp)、追川礼章(Pf)、金山京介(Tn)(豊洲シビックセンター)
4日 高関健指揮東京シティ・フィル、池田香織(Ms)(東京オペラシティ)🍏
5日 三原三紗子(Pf)(王子ホール)
6日 井上祐子(Va)、藤原晶世(Vn)、藤原秀章(Vc)(清水フェルケール博物館)
12日 フランチェスコ・トリスターノ(Pf)(王子ホール)
13日 カーチュン・ウォン指揮日本フィル、山下牧子(Ms)(サントリーホール)
14日 瀬川裕美子(Pf)(トッパンホール)❤️
16日 P・ヤルヴィ指揮チューリヒ・トーンハレ管弦楽団、ブルース・リウ(Pf)(サントリーホール)❤️
17日 セバスティアン・ヴァイグレ指揮読響、ルーカス・ゲニュシャス(Pf)、新国立劇場合唱団ほか (サントリーホール)✈️ 🍏
18日 クラウス・マケラ指揮オスロ・フィル (東京芸術劇場コンサートホール)
19日 クロエ・デュフレーヌ指揮東京フィル、中野りな(Vn)(サントリーホール)
20日 高関健指揮NHK響 (NHKホール)❤️
21日 大倉由紀枝(Sp)リサイタル (サントリーホール・ブルーローズ)
22日 セバスティアン・ヴァイグレ指揮読響、望月優芽花(Pf)、加藤のぞみ(Ms)(東京芸術劇場コンサートホール)
23日 レイフ・オヴェ・アンスネス(Pf) (東京オペラシティコンサートホール)
25日 ヨーヨー・マ(Vc)、キャサリン・ストット(Pf)(愛知県芸術劇場コンサートホール)※ツアー特設サイトに即日レポート
27日 セバスティアン・ヴァイグレ指揮読響、宮田大(Vc)(サントリーホール)❤️
29日昼 藤田めぐみ(Pf)(旧JTホール)❤️
29日夜 佐藤杏樹(Hp) (護国寺・同仁カトリック教会)
30日 一柳慧追悼コンサート (東京コンサーツ・ラボ)❤️
31日 内田光子(Pf)マーラー・チェンバー・オーケストラ (ミューザ川崎シンフォニーホール)
❤️は「音楽の友」、🍏は「モーストリー・クラシック」、⭐️は「オン★ステージ新聞」、✈️は「毎日新聞クラシック・ナビ」に批評などを掲載予定
10月5日夜に軽い咳が出たと思ったら6日、静岡市清水の演奏会後に発熱、コロナやインフルエンザではなかったものの熱が39度まで上がり、しつこい症状に悩まされた。風邪のウイルスも変異を繰り返し、いざかかるとなかなか去ってくれない。鈴木優人指揮のヘンデル「ジューリオ・チェーザレ」、大野和士の指揮と藤田真央のピアノが共演した都響定期、小澤真智子(ヴァイオリン)のタンゴなどいくつか、予定していた演奏会を聴き逃した。
病欠といえば96歳の長老マエストロ、ブロムシュテットもN響客演を断念、ブルックナーのA定期は中止、B定期は尾高忠明、C定期は高関健がそれぞれ代役指揮を担った。B2日目に出かけるつもりが、何と泉岳寺のN響練習場あたりでエンジンが怪音を発して故障、ゆっくりと徐行して帰宅し、修理の手配をするうちに演奏会が終わってしまうオマケまでついた。休憩なしのC定期だけ無事に聴くことができ、N響相手にもひたすら楽譜を追い、右手で正確に拍を刻み、左手で適確なキューを出し続ける高関の強固な意思をコンサートマスターのMARO(篠崎史紀)が真正面から受け止め、素晴らしいシベリウスに仕上げた。2日前に聴いたオスロ・フィルの同曲はマケラが忙しく過ぎてアンサンブルを緻密に整える時間がないのか、雑然としたアンサンブルがボーボーと音を出すだけで、ちょっと失望した。
同じ高関が亡くなった飯守泰次郎に代わって指揮したシティ・フィル定期、首席指揮者就任披露を兼ねたウォンの日本フィル定期、デ・ファリャの「三角帽子」などスペイン音楽を特集したヴァイグレ指揮読響の芸劇マチネと、3つの公演で日本人メゾソプラノが大活躍した。ヴァイグレは定期でヒンデミット、アイスラーと第二次世界大戦中にナチスが「頽廃音楽」の烙印を押した作曲家、名曲でロシア音楽、週末マチネでスペイン音楽とバラエティ豊かな選曲に一貫して高水準を保ち、コンビの好調を印象づけた。ピアノの望月、チェロの宮田のソロも傑出。若いフランス女性ながらヘルシンキでヨルマ・パヌラに師事したデュフレーヌは初共演の東京フィルから鮮やかな色彩、軽やかな響きを引き出し強い印象を残した。
トリスターノ、アンスネスと個人的にも長い付き合いのヨーロッパ人ピアニスト2人の進境はますます著しく、藤田めぐみ、瀬川裕美子、井上祐子ら日本人ソリストも独自の境地を極めつつある。ヨーヨー・マとストットの安定感も抜群だったし、一柳追悼コンサートで無伴奏、ピアノとのデュオの2曲を弾き、さらなる凄みを示した堤剛(チェロ)も圧巻だった。内田とマーラー・チェンバーはこちらの期待が大き過ぎたのか、肝心の協奏曲がオケだけのシェーンベルクの目覚ましい成果に及ばなかったのは残念。パーヴォのアプローチにあまり反応せず、自身の「殻」を頑なに守るブルース・リウの姿勢にも違和感を覚えた。
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