• 池田卓夫 Takuo Ikeda

愛知室内オケと広上淳一の初共演→名古屋テアトロ管&合唱団の「Cav&Pag」


左はプロ、右はアマチュア(歌手を除く)

2022年7月第3週後半は名古屋で2公演を鑑賞する間の土曜日、京都で別の仕事をするハードスケジュールだった。過去1年あまり、若い友人の八木宏之さんが立ち上げた音楽情報サイト「FREUDE(フロイデ)」https://freudemedia.com/ の依頼で愛知室内オーケストラ(ACO)の定点観測を続け、8回の連載記事を書いた。最終回の公開に先立ち、3か月ぶりの現状を聴いておきたいと考え、7月22日、「ACO20周年特別企画Part1」と銘打った第38回定期演奏会を三井住友海上しらかわホールで聴いた。指揮は初登場の広上淳一、ソリストは3月にブラームスの「ヴァイオリン協奏曲」(原田慶太楼指揮)で初共演したばかりの竹澤恭子(ヴァイオリン)、ACO弦楽器アドヴァイザーの川本嘉子(ヴィオラ)の愛知県出身コンビ、コンサートマスターには東京都交響楽団の山本友重が、初めてゲストで招かれた。


プログラムは独特だった。ブルッフ「ロマンス」(川本)、バーバー「ヴァイオリン協奏曲」(竹澤)、チェロのパートを川本が自身で編曲したブラームス「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」(竹澤&川本)と少し変わった「3大B」で、オーケストラだけの曲はない。「名古屋にこれほど優秀な室内オケが育っていたとは、嬉しい驚きでした」という広上のスピーチの後、アンコールにモーツァルト「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲」の第2楽章が世界平和への思いもこめて奏でられた。〝合わせ物〟を嬉々として振る広上の貢献を差し引いたとしても、過去3か月間、オーケストラはさらなる進化を遂げていた。少し前まで若干の躊躇があったようにも思えたレアなレパートリーへの取り組みが、今は喜びに変わった。旺盛な表現意欲はさらに自発性を高め、引き締まったアンサンブルと多彩な音色、室内オーケストラとは思えない豊かな音量に結実していた。バーバー第2楽章、竹澤の深い内面性を一段と引き立てた客演首席オーボエ奏者、山本直人のソロも秀逸。竹澤や川本を含め、1つの同志的結合体が新たな音楽の波動を広げていく様をしかと見届けた。


24日に名古屋へ戻り、名鉄特急で15分の太田川駅前にある東海市芸術劇場大ホールで名古屋テアトロ管弦楽団/合唱団第4回公演マスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」レオンカヴァッロ「道化師(パリアッチ)」の二本立てを佐藤正浩の指揮で観た。名古屋テアトロは2015年12月に発足、主にイタリア歌劇の上演を目的としたアマチュアの演奏団体で、ソリストにはプロの歌手を迎える。団長の上井隆志はトロンボーン奏者を兼ね、コンサートマスターの高橋広はワーグナー楽劇の連続上演で気を吐くもう1つのアマチュア団体、愛知祝祭管弦楽団と掛け持ちだ。深くオペラに傾倒する中京圏独特のアマチュア音楽事情も垣間見え、なかなか興味深い。佐藤は今年6月にも東京で、樋口達哉(テノール)主演の「道化師」を指揮したばかり。その時は岩田達宗の演出意図に沿って長いパウゼ(休止)を入れるなど、ヴェリズモ(現実主義)オペラには珍しい音楽づくりだったが、今回は演奏会形式のアマチュア公演を踏まえ、よりストレートに情熱をぶつけるドラマティックな指揮で聴き応えがあった。オーケストラはセクションごとの凸凹が残念ながら、完全燃焼した。


「カヴァレリア」ではトゥリッドウの宮崎智永、ローラの宇田村仁美、アルフィオの初鹿野剛、「道化師」ではカニオの岡田尚之、ネッダの伊藤晴、トニオの増原英也の歌が光った。合唱は演技も交えて味があり、東海児童合唱団の子どもたちが貴重なアクセントを与えた。




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