池田卓夫 Takuo Ikeda
師弟共演!徳永二男と三浦文彰がYMCAチャリティ@イタリア大使館を動画配信

明治維新2年前の幕末、1866年に日伊修好通商条約が締結されて以来、日本とイタリアの交流は150年を超えた。現在の大使館は旧松山藩の江戸中屋敷(後の松方公爵邸)の跡地にあり、美しい日本庭園を擁する。元禄16年(1703年)2月4日には江戸幕府の命により、「忠臣蔵」で知られる赤穂浪士の大石主悦(大石内蔵助の息子)、堀部安兵衛ら10人が切腹した場所でもある。昭和14年(1939年)には徳富蘇峰の「赤穂浪士十名切腹ノ地・伊太利大使館」の揮毫による記念碑が当時の大使の発案により、大使館の敷地内に建立された。ガラスを多用して庭園を借景とした現在の大使館・大使公邸は日本とイタリアの建築家の合作により、1965年に完成。デザインの国のシックなインテリアは音楽と美しく調和する。
徳永と三浦がベートーヴェンの「メヌエット」やモーツァルト「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」を合奏する姿は師弟愛にあふれ微笑ましいが、J・S・バッハの「無伴奏パルティータ」では世代を超えた2人の名手が食うか食われるか、激しい音楽性の競い合いを繰り広げる。徳永は細かいことにとらわれず、全3曲の「パルティータ」では最も小ぶりで軽妙と思われがちな「第3番」を巨大なスケールの音楽に仕上げた。「シャコンヌ」はスペインの舞曲が下敷きということもあって、ヴァイオリニストが技を誇示する作品(もちろん演奏至難だ)と思われがちだが、最近の研究でバッハが最初の妻で病死したマリア・バルバラのための「哀悼歌(ラメント)として作曲した」との学説が有力とされる。まだ27歳の三浦は太く、陰影の深い音で「シャコンヌ」の内面世界にどんどん降りていき、バッハの錯綜した思いを現代に蘇らせる。これ1曲を鑑賞するだけでも、かなり手応えのある映像といえる。