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  • 執筆者の写真池田卓夫 Takuo Ikeda

山澤慧のチェロはB→Cの鑑であった!


東京オペラシティ文化財団がオープン直後から続けている新人演奏家の紹介シリーズは、J・S・バッハと同時代(コンテンポラリー)作品を基軸とした「B→C(バッハからコンテンポラリーへ)」と命名されている。その第219回、山澤慧の無伴奏チェロ・リサイタルは久々に「B」と「C」だけで正面突破を目指した〝獰猛〟プログラムで、あっぱれだった。


1987年東京生まれ。まずは曲目に目を通していただきたい。


大バッハ「無伴奏チェロ組曲」の全6曲の絶妙なハイライトの前に必ず、山澤の委嘱新作の世界初演を弾き、切れ目と拍手なしでバッハに移行する作業を6度、繰り返した。新作によっては弓も特殊なものを使ったが、チェロは一貫して同じ楽器。最小限の調弦に徹し、一夜を1つの組曲、あるいは物語に仕上げていた。筆者個人としては髙橋の明るく朗らかな感触と歌心、平川のジャズのノリを感じさせつつ実はバッハからバルトークに至る音楽史のパノラマにまとめた手腕、坂東の前衛からバッハへの逆走ぶりの見事な設計などに、新しい世代の音のあり方を体感。他の3作も含め、どれも非常に面白かった。


バッハは前半の特に最初の方、初演作品のプレッシャーで滑舌が曖昧だったので心配になった。だが次第に調子を上げ、後半の3曲では様式その他、日ごろの研鑽&研究の成果を示し、唐突に始まった「日本チェロ男子の時代」を担う1人である実態を明確に印象付けた。

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