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  • 執筆者の写真池田卓夫 Takuo Ikeda

宮田大&ジェルネ・シャマユ・ゼルキン

クラシックディスク・今月の3点(2023年11月)


個性が際立つ3点

「VOCE[ヴォーチェ] フェイヴァリット・メロディー」

宮田大(チェロ)、ジュリアン・ジェルネ(ピアノ)

1. 村松崇継:Earth

2. ロルフ・ラヴランド:ソング・フロム・ア・シークレット・ガーデン

3. ビル・ウィーラン:リバーダンス

4. 久石 譲:Asian Dream Song

5. カミーユ・サン=サーンス:「あなたの声に私の心は開く」~《サムソンとデリラ》

6. 加羽沢美濃:Desert Rose

7. 菅野祐悟:ACT

8. アストル・ピアソラ:リベルタンゴ

9. 吉松隆:ベルベット・ワルツ

10. 植松伸夫:ザナルカンドにて

11. 坂本龍一:星になった少年

12. アントニン・ドヴォルザーク:私にかまわないで ~4つの歌曲 作品82 第1曲


2023年4月18〜20日、新潟県の柏崎市文化会館アルフォーレでセッション録音。宮田とジェルネは2009年から足かけ15年、デュオを続けているので息もぴったり。普通の意味でクラシックに分類される作曲家はサン=サーンスとドヴォルザークくらい、久石譲や吉松隆、ピアソラらは微妙な境界に存在するが、このディスクは余計なジャンル分けを必要としない。どこまでも吹っ切れた宮田が今が盛りの美音、闊達な表現を駆使して自分の好きな「うた」の数々をとことん歌い上げ、ジェルネがぴたりとつけるにとどまらない積極的なコラボレーションを繰り広げる。どの曲も、何の無理もなく、耳から心にスーッと入ってくる。色々と悩ましいことも多い昨今、どことなく疲れている人々にも聴いてほしいアルバム。

(日本コロムビア)



「Letter(s) to Erik Satie 」レター(ズ)トゥ・エリック・サティ

ベルトラン・シャマユ(ピアノ)

ジョン・ケージ (1912-1992) (※ジョン・ケージ作とされる)

「エリック・サティのための小石の全面」

エリック・サティ(1866-1925)

「グノシエンヌ 第1番」

ジョン・ケージ

「瞑想への前奏曲」

エリック・サティ

「ジムノペディ 第1番」「グノシエンヌ 第2番」「グノシエンヌ 第3番」

ジョン・ケージ

「ア・ルーム」「ある風景の中で」

エリック・サティ

「パンタグリュエルの幼年時代の夢」

「犬のためのぶよぶよした本当の前奏曲」

「ジムノペディ 第2番」

「海水浴」(『スポーツと気晴らし』より)

「グノシエンヌ 第4番」

「ブランコ」(『スポーツと気晴らし』より)

ジョン・ケージ

「スウィンギング」

エリック・サティ

「ジムノペディ 第3番」「グノシエンヌ 第5番」「夜想曲 第2番」

「永遠に続くタンゴ」(『スポーツと気晴らし』より)

ジョン・ケージ

「永遠のタンゴ」

エリック・サティ

「グノシエンヌ 第6番」「サラバンド 第3番」「うつろな空想」

「第1幕への前奏曲"天職"」」(『星たちの息子』より)

「グノシエンヌ 第7番」

ジェームズ・テニー(1934-2006)

「梨の形をした3つのページ」(エリック・サティを祝して)

ジョン・ケージ

「夢(Dream)」


2023年4月3〜6日、ジャック・ルーシェが1977年に古城を改造して録音機材を設え、2021年にブラッド・ピットが改修復活させたというフランス、プロヴァンス地方コレンのミラヴァル・スタジオでセッション録音。シュマユは前作のメシアン「幼子イエスに捧ぐ20のまなざし」全曲盤でも武満徹、ミュライユ、クルタークらのメシアンにちなんだ作品を組み合わせ、独特の立体感を与えていた。今回もサティを「コンセプチュアル・アートの父」ととらえてジョン・ケージ、ジェームズ・テニーの作品を織り込んだ。「ジムノペディ」などが名曲の仲間入り、「サティなんて、こんなもの」と考えがちな風潮に一撃を与える。

(ワーナーミュージック=Amazonに未掲載のため、タワーレコードのサイトを表示)


ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第21番ハ長調作品53《ワルトシュタイン》」「同第23番ヘ短調作品57《熱情》」

ルドルフ・ゼルキン(ピアノ)


《ワルトシュタイン》は1986年3月にニューヨーク、サニー・パーチェイス・カレッジのリサイタルホール、《熱情》は1989年5〜6月にヴァーモント州のギルフォード・サウンドで、ともにドイツ・グラモフォン(DG)のハンノ・リンケがエグゼクティヴ・プロデューサーを務めたセッション録音。自己の演奏に厳しかったゼルキン。娘ジュディスはディスクのブックレット冒頭で「この録音は最終的に父の承認を得ていません。承認が下りる頃にはすでに重病を患っており、リリースを確認する前に亡くなりました」と明かし、今回の発売は「DGの125周年と、私の父であるルドルフ・ゼルキンの生誕120周年を記念してリリースされたものです」と記した。父ゼルキン(1903ー1991)は同い年のクラウディオ・アラウ、ヴラディーミル・ホロヴィッツとともに20世紀を代表する偉大なピアニストだった。


録音時点で83&86歳。もちろん完璧な演奏ではないし、現代のピアニストたちが聴けば「あれっ?」と首をかしげるような箇所もあるが、録音のかけがえのない価値は「ベートーヴェンの、そして父自身の人間であることの意味するものへの深い理解を驚くほど反映している」(ジュディス)点にある。生涯に2度の世界大戦を経験、核兵器の登場も目の当たりにした世代、ナチスのホロコースト(大量殺戮)に遭遇したユダヤ人の1人としても、80代後半まで演奏を続けたゼルキンの紡ぐ音楽は人間性の深いところと分かち難く結びついている。作曲と演奏が完全に分離する直前に位置するがゆえの豊かな即興性、鍵盤を「たたく」より「押し込む」に近い感触のタッチから生まれる重量級の深い響きは、もはや現代のピアニストからは聴けない類の再現様式だろう。久しぶりに、こういう音楽を聴いた気がする。

(ユニバーサルミュージック)





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