千葉県立幕張総合高校、東京音楽大学の先輩後輩の関係にある2人のピアニスト、安嶋健太郎と米津真浩のデュオ(2台ピアノ)リサイタルが2019年1月28日、ヤマハ銀座コンサートサロンであった。所用の関係で前半、ブラームスの「2台のピアノのためのソナタ へ短調 作品34b」のみを聴いた。有名な「ピアノ五重奏曲」の作曲者自身による異版である。
この曲では非常に研究熱心な安嶋が第1ピアノ、ヴィルトゥオーゾ(名手)の技を持つ米津が第2ピアノ(後半のピアソラでは逆)を担当。まれにみる集中度でテンションを一瞬も緩ませることなく、全4楽章を弾ききったのは見事だった。2人の息はよく合っていたが、安嶋は譜めくりの女性を従え、米津はフットスイッチでiPadの譜面を送る違いがそのまま、2人の世代差を反映する。安嶋のロマンティックな持ち味、米津の核心へと瞬時に迫るピアニズムの対照が、楽曲の再現に立体感を与えていたといえる。
半面、あまりに正面きってのアプローチがブラームスの「ロマン派」と呼ばれる側面を削ぎ落とし、連打に次ぐ連打がどこか、ラフマニノフの2台ピアノ作品のような様相を呈していた。もう少し緊張を緩め、ゆったり歌わせるとか、意識的な「ずれ」で「ゆらぎ」の場面をつくるとか、音楽解釈の面では、より成熟した味わいを求めたくなったのも確か。何より、天井の低い小さな空間でフルコンサートピアノ2台の全力投球と向き合うには、私の耳が弱すぎる?らしく、脳にガンガンと打ち込まれる大音響を音楽鑑賞として受け止められるのは、1時間が限界だった。2人の真摯な姿勢に敬意を表しつつも、次回はより空間容積の大きい会場で再度、じっくり聴ける機会が訪れることを切に願う。
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