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執筆者の写真池田卓夫 Takuo Ikeda

多様な時代&様式の音楽劇を満喫する

今月のパフォーマンス・サマリー(2023年3月)


1日 フィリップ・ジャルスキー《オルフェーオの物語》(東京オペラシティコンサートホール)

4日 モーツァルト・マチネ第52回 小林壱成(コンサートマスター)ら東京交響楽団メンバーによるクラリネット五重奏(ミューザ川崎シンフォニーホール)

5日 プロデュースオペラ《ニュルンベルクのマイスタージンガー》(びわ湖ホール)

6日 インゴ・メッツマッハー指揮新日本フィルハーモニー交響楽団(第647回サントリーホール定期演奏会)、クリスティアン・テッツラフ(Vn)

9日 第51回サントリー音楽賞受賞記念コンサート 河村尚子(Pf)室内楽withドーリック弦楽四重奏団(サントリー・ブルーローズ)

10日 アンドレア・バッティストーニ指揮東京フィルハーモニー交響楽団第982回定期演奏会(サントリーホール)

11日 漆原啓子(Vn)&野平一郎(Pf)

14日 ワルトラウト・マイヤー(Ms)さよならコンサート

15日 井上道義指揮九州交響楽団第404回定期演奏会(アクロス福岡シンフォニーホール)

16日 大瀧拓哉(Pf)リサイタル(杉並公会堂小ホール)

17日 オッフェンバック《ホフマン物語》(新国立劇場オペラパレス)

18日 アンドレア・バッティストーニ指揮東京フィルハーモニー交響楽団、新宿文化センター合唱団、宮里直樹(Ten)ベルリオーズ「レクイエム」

18日 林周雅(Vn)、實川風(Pf&指揮)ベートーヴェン特集(大和田文化センター)

19日 Teatro Trinitario 2023 J・シュトラウスⅡ《こうもり》(フェニーチェ堺)

21日 大野和士指揮東京都交響楽団プロムナードコンサートNo.401、ジャン=エフラム・バヴゼ(Pf)(サントリーホール)

23日 小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクト《ラ・ボエーム》(東京文化会館大ホール)

23日 オーボエアンサンブル・フィルクレ第7回定期演奏会(日本福音ルーテル東京教会)

27日 大野和士指揮東京都交響楽団第971回定期演奏会B シリーズ、パトリツィア・コパツィンスカヤ(Vn)(サントリーホール)

29日 浜野考史(Vn)&干野宜大(Pf)(浜離宮朝日ホール)

30日 東京・春・音楽祭2023 リッカルド・ムーティ指揮《仮面舞踏会》(東京文化会館大ホール)

31日 鮫島明子(Pf)リサイタル(横浜みなとみらい小ホール)


16世紀のモンテヴェルディに始まり、19世紀末のプッチーニに至るまで、実に様々の音楽劇を楽しんだ1か月だった。ジャルスキー渾身の《オルフェーオの物語》は、馴染みが薄い複数の歌劇を切れ目(&休憩)なし80分のポプリ(接続曲)に編み、腕利きのピリオド楽器アンサンブルとともに唯一無二の幻想時間を現出させた点で、白眉といえた。もちろんムーティと東京春祭オーケストラの極上の響きで描かれた《仮面舞踏会》、びわ湖ホール沼尻竜典時代の総決算といえる《マイスタージンガー》、マテウスの指揮が冴えた小澤塾《ラ・ボエーム》、結局はオッフェンバック畢生の音楽に圧倒された《ホフマン物語》、長くオペラの世界で活躍したマイヤーの「さよならコンサート」など、それぞれに素敵な舞台だった。中でもフェニーチェ堺の《こうもり》は関西人の喜劇センス爆発を長くドイツにいたカペルマイスター髙橋直史がきっちりと引き締め、稀にみる完成度を楽しむことができた。


日本のオーケストラは、本当に上手くなったと思う。音量も十分なら、テッツラフやコパツィンスカヤといった強烈なソリストを受けて立つ自発的な表現力も目立って改善した。そこに長く貢献してきた人々--四方恭子は都響のコンマスを退任、井上道義はショスタコーヴィチ「交響曲第12番」の〝振り納め〟を九響との壮絶な演奏で飾った。前月にプレトニョフと濃厚なロシアン・サウンドを奏でた東京フィル、バッティストーニとのフランス音楽では一気に明るく軽く、しなやかなサウンドに変じた。メッツマッハーの来日は久しぶりだったが、もっと頻繁に現れ、一筋縄ではいかないプログラムで刺激を与えてほしいと願う。


小林壱成、河村尚子、漆原啓子、野平一郎、大瀧拓哉、林周雅、實川風、浜野考史、干野宜大、鮫島明子。日本のヴァイオリニスト、ピアニストをコンスタントに聴き続けることができたのも収穫。それぞれがしっかりとした個性を備え、味わい深い演奏を繰り広げた。




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