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  • 執筆者の写真池田卓夫 Takuo Ikeda

声楽作品で冴え渡る日本のオーケストラ

更新日:2023年5月3日

今月のパフォーマンス・サマリー(2023年4月)


インキネン、首席指揮者として最後の日本フィル定期(29日、サントリーホール)

1日 キット・アームストロング(Pf)「鍵盤音楽年代記」1(東京文化会館小ホール)⭐️

2日 垣岡敦子(S)AMORE〜愛の歌vol.8《蝶々夫人》(王子ホール)

4日 キット・アームストロング「鍵盤音楽年代記」2(東京文化会館小ホール)⭐️

5日 ブリン・ターフェル(Bs-Br)Opera Night(東京文化会館大ホール)⭐️❤️

6日 キット・アームストロング「鍵盤音楽年代記」3(東京文化会館大ホール)⭐️❤️

7日 飯守泰次郎指揮東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団ブルックナー①第8番(サントリーホール)

8日 東京二期会 R・シュトラウス《平和の日》日本初演(オーチャードホール)

9日 マレク・ヤノフスキ指揮NHK交響楽団 ワーグナー《ニュルンベルクのマイスタージンガー》(東京文化会館大ホール)⭐️

10日 キット・アームストロング「鍵盤音楽年代記」5(東京文化会館小ホール)⭐️

11日 郷古廉(Vn)&加藤洋之(Pf)、横坂源(Vc)(東京文化会館小ホール)⭐️

13日 大野和士指揮東京都交響楽団第972回定期演奏会Bシリーズ(サントリーホール)❤️

14日 佐渡裕指揮新日本フィルハーモニー交響楽団すみだクラシックへの扉第14回、辻井伸行(Pf)(すみだトリフォニーホール)

14日 佐渡裕指揮新日本フィルハーモニー交響楽団すみだクラシックへの扉第14回、辻井伸行(Pf)(すみだトリフォニーホール)

14日 横山奏指揮日本フィルハーモニー交響楽団第246回芸劇シリーズ、前橋汀子(Vn)(東京芸術劇場)❤️

15日 沖澤のどか指揮京都市交響楽団第677回定期演奏会 ※常任指揮者就任披露(京都コンサートホール)❤️

16日 フレデリック・シャスラン指揮読売日本交響楽団 プッチーニ《トスカ》(東京文化会館大ホール)⭐️

17日 アレクセイ・リュビモフ(Pf)(五反田文化センター音楽ホール)❤️

19日 新国立劇場 ヴェルディ《アイーダ》(新国利劇場オペラパレス)

22日 堤剛(Vc)&河村尚子(Pf) (サントリーホール)

24日 飯守泰次郎指揮東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団ブルックナー②第4番《ロマンティック》(サントリーホール)

26日 パーヴォ・ヤルヴィ指揮NHK交響楽団第1982回定期B、マリー・アンジュ・グッチ(Pf)(サントリーホール)❤️

29日 ピエタリ・インキネン指揮日本フィルハーモニー交響楽団第749回東京定期、ヨハンナ・ルサネン(S)、ヴィッレ・ルサネン(Br)、ヘルシンキ大学男声合唱団、東京音楽大学合唱団(サントリーホール)

※ ⭐️は「東京・春・音楽祭2023」公演、❤️は「音楽の友」誌にレヴューを執筆する予定


演出を伴うオペラ公演では通常、オーケストラはピットの暗闇で演奏し、ソロと合唱の声楽の伴奏を担う。ところが2023年4月は演奏会形式、セミステージ形式の上演が相次ぎ、オーケストラが舞台上で強い存在感を放った。


「東京・春・音楽祭2023」のムーティ指揮東京春祭オーケストラ、ヤノフスキ指揮N響、シャスラン指揮読響の素晴らしさは会員制政治経済情報サイト「ストイカ」での私の連載「通奏低音」(無料公開記事)に詳しく紹介した。


同音楽祭では米国出身の鬼才、キット・アームストロングが鍵盤音楽500年の歴史を100年単位、5回連続で俯瞰した「鍵盤音楽年代記」も稀にみる好企画だった。かねて親交のあるウクライナの作曲家シルヴェストロフの作品を政治的リスクを顧みずに演奏し続けるロシア人ピアニスト、リュビモフの味わい深いピアニズムも忘れ難い。


声楽作品におけるオーケストラの熱演に戻れば、日本フィル首席指揮者として最後の東京定期にシベリウス初期の名作「クレルヴォ交響曲」を選んだインキネンの棒も熱かった。桂冠指揮者&芸術顧問のアレクサンドル・ラザレフがパワーを授けたのに対し、インキネンは日本フィルに長く染みついた〝弾き癖〟を1つ1つ正し、弦の正確な音程と透明な音色、今の時代に即した様式感を植え付け、創立指揮者・渡邉曉雄以来の「シベリウス・オーケストラ」のDNAを21世紀に継承した。その間、彼自身の指揮者としての円熟も加速した。


東京フィルハーモニー交響楽団は二期会、準・メルクル指揮の《平和の日》セミステージで健闘したが、新国立劇場のカルロ・リッツィ指揮《アイーダ》のピット演奏が粗雑で、がっかりした。東京・春・音楽祭の3オケが余りにも見事だった結果、耳が贅沢になったのか?


もう1つ。4月は創立者の1人であるチェロ奏者で指揮者、教育者の齋藤秀雄の薫陶を直接受けた「桐朋学園第1世代」、すでに80歳前後となった日本人演奏家の激しい気迫に満ちた演奏にも魅了された。チェロの堤(1942ー)はかねて演奏を高く評価してきた河村をデュオのパートナーに指名、特にプロコフィエフとマルティヌーのデュオで至芸を披露したほか、自身が委嘱した権代敦彦の無伴奏曲で衰えない技巧を印象づけた。ヴァイオリンの前橋(1943ー)、指揮の飯守泰次郎(1940ー)ももはや何もひけらかすことなく、ひたすら音楽の内面に没入する境地に至り、味わい深い演奏を繰り広げた。


N響が2年ぶり共演の前首席指揮者パーヴォと抜群の相性を再確認。都響が1974年12月定期でプロ日本初演(渡邉曉雄指揮)した「交響曲第7番」を奏で日本屈指のマーラー・オーケストラの力量を示した大野指揮の定期、日本のメジャー楽団初の女性シェフとなった沖澤の京都での仕事初めも、それぞれ良い感触を残した。新日本フィルの新音楽監督、佐渡はひとまず客足回復に成果をみせ、今後は60代の円熟をどう音楽的に発揮できるかが課題。




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