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  • 執筆者の写真池田卓夫 Takuo Ikeda

原田慶太楼と金子三勇士の初共演モーツァルト、無観客公演&ストリーミングで


慶太楼(左)&三勇士、成功を喜びあう@ミューザ川崎

ミューザ川崎シンフォニーホールが主催、フランチャイズ・オーケストラの東京交響楽団が年4回、週末午前11時開演で休憩なしに演奏する「モーツァルト・マチネ」。2020年3月14日は第40回の節目に当たったが、日本政府の新型コロナウィルス対策の活動自粛要請に伴って観客を入れず、「ニコニコ動画」のストリーミング(ライヴ中継)と、オクタヴィア・レコードのCD録音のための演奏会という変則的な形で実現した。


指揮者の原田慶太楼がピアノ協奏曲で金子三勇士との初共演を望み、「いちばん弾きたい曲」を尋ねたところ「第13番ハ長調K.415」となり、同じく1782年に書かれた「交響曲第35番ニ長調K.385《ハフナー》」、さらに「セレナードからの転用」つながりで、楽員による室内楽(フルート=八木瑛子、ヴァイオリン=水谷晃、ヴィオラ=武生直子、チェロ=伊藤文嗣)の「フルート四重奏曲第3番ハ長調K.285b」を組み合わせた。コンサートマスターの水谷をはじめとする楽員たちの生き生きとした表情は、往年の「オーケストラ・プレーヤーによる〝前座〟の義務的な室内楽」を記憶する者にとって、隔世の感がある。


原田はプログラミングの背景を視聴者に語りかけてから、演奏を始めた。対向配置、古典ティンパニなど新しい世代の指揮者にとっては「当たり前」となった様式感をベースに明確なアクセントとアーティキュレーション、、内声部まで徹底したフレージングとリズムを示し「日本では初めて指揮するモーツァルト」にも、非凡な能力を発揮した。金子のピアノも恐ろしく透明な音とメリハリの効いたタッチで精彩、陰影に富み、指揮者との息はぴったりだった。アンコールはピアノソロがモーツァルトの「ソナタ第5番ト長調K.283」の第2楽章で、ハ長調の調性を協奏曲と共有する。オーケストラ・アンコールは中村八大作曲の「上を向いて歩こう」。創唱歌手の坂本九が川崎市出身という縁もあり、今の世の中への応援歌として、最適の選曲だった。原田は終演後、「同じ歌手のヒット曲《見上げてごらん、夜の星を》とどちらにしようか悩んだ挙句、昼公演なので《上を向いて…》にした」と明かした。


演奏会のレポートは4月18日発売の月刊「ショパン」5月号に掲載予定。

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