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  • 執筆者の写真池田卓夫 Takuo Ikeda

メルニコフ・ユジャ&ドゥダメルLAPO幸田浩子&寺嶋陸也

クラシックディスク・今月の3点(2023年9月)


ユジャは小さくしても目立つ

「7人の作曲家と7種の鍵盤楽器によるファンタジー」

アレクサンドル・メルニコフ(鍵盤楽器)


※以下、キングインターナショナルHPより転載

①J.S.バッハ:半音階的幻想曲とフーガBWV903【リュッカース・モデルによるマルクス・フィッシンガー製2段鍵盤チェンバロ2019年】 ②C.P.E.バッハ:幻想曲嬰ヘ短調H.300, Wq.67【クリストフ・フリードリヒ・シュマール製タンジェント・ピアノ1790年】 ③モーツァルト:幻想曲ハ短調K.396/幻想曲ニ短調K.397【1795年アントン・ヴァルター・モデル、クリストフ・カーン製レプリカ・フォルテピアノ2014年】 ④メンデルスゾーン:幻想曲嬰ヘ短調Op.28【グラーフ製フォルテピアノ1828年頃】 ⑤ショパン:幻想曲ヘ短調Op.49【エラール1885年製】 ⑥ブゾーニ:古い旋法による幻想曲OP.33bの4【ベヒシュタインB 1905-10年頃製】 ⑦シュニトケ:即興とフーガOp.38【スタインウェイD-274】


1973年モスクワ生まれのメルニコフは現代一級のヴィルトゥオーゾ(名手)であると同時に、歴史的情報に基づく演奏(HIP)への意識が高く、複数のピリオド(作曲当時の)楽器を弾き分けてきた。2021年に東京のトッパンホールで4台の鍵盤楽器を弾き分けたリサイタルの鮮やかさは今も記憶に残る。まず、当HPに書いたレビューを再掲する;


2022年7月、ベルリンのテルデックス・スタジオでセッション録音した新譜ではさらに3台増え、18世紀のJ・S・バッハから20世紀のシュニトケに至る7人の作曲家の「幻想曲」あるいは幻想的性格の作品7曲それぞれを、自身が所有する7台の楽器で弾き分けている。バッハのチェンバロが「こんなもんでしょう」という感じなので安心していると、だんだん不思議な音楽と響きに現れ、メンデルスゾーンからシュニトケにかけて驚きの連続となる。


知的好奇心と音楽の洗練の両面から、聴く側も様々な感覚を刺激される面白いアルバムだ。

(ハルモニア・ムンディ=キングインターナショナル)


「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲全集」(第1〜4番&「パガニーニの主題による狂詩曲」)

ユジャ・ワン(ピアノ)、グスターボ・ドゥダメル指揮ロサンゼルス・フィルハーモニック


作曲者の生誕150周年、没後80周年を記念する新譜ラッシュの中でも、ひときわ目を引く1点。2023年2月9〜13日にロサンゼルス・フィル(LAP)の本拠地、豊田泰久氏が音響設計を担ったウォルト・ディズニー・コンサート・ホールのLAP定期演奏会ライヴを2枚のディスクに編集した。第2&3番が際録音に当たるユジャのピアノは相変わらず闊達だが、良い意味で落ち着きを増し、音1つ1つを慈しむかのような珠玉のタッチが目覚ましい進境を物語る。近代から近現代にかけて世界が大きく揺れ動く中でロシアからヨーロッパ、アメリカ合衆国と渡り歩きながらコンポーザー&ピアニストの多忙な日々を送ったラフマニノフが生涯持ち続けたものと、ジャズなど新しいジャンルの音楽に触れながら新たに獲得したものとの両面をユジャはバランスよく、最大限の繊細さと大胆さをもって引き出していく。


ラフマニノフはロサンゼルス郡西部の街ビヴァリー・ヒルズで亡くなったので、LAPは「地元」のオーケストラだ。ドゥダメルは2009年から音楽監督を務めるLAPを自由自在に操り、とりわけアメリカ時代の作品である第4番や「パガニーニ狂詩曲」に新たな輝きを与える一方、第2&3番の影に隠れがちな第1番でも力強さと若さのみなぎる音楽を聴かせる。

(ドイツ・グラモフォン=ユニバーサル ミュージック)


「花のまち〜日本のうたⅢ」

幸田浩子(ソプラノ)、寺嶋陸也(ピアノ)


1. さくら(さくらさくら)(日本古謡/寺嶋陸也・編曲)

2. さくら横ちょう(加藤周一・詩/中田喜直・曲)

3. たんぽぽ(三好達治・詩/中田喜直・曲)

4. サルビア(堀内幸枝・詩/中田喜直・曲)

5. わらい(金子みすゞ・詩/中田喜直・曲)

6. 林檎の花が降りそそぐ(城 左門・詩/宅 孝二・曲)

7. びいでびいで(北原白秋・詩/平井康三郎・曲)

8. 平城山(北見志保子/平井康三郎・曲)

9. 花のまち(江間章子・詩/團 伊玖磨・曲)

10. 舟唄-片戀-(北原白秋・詩/團 伊玖磨・曲)

11. 紫陽花(北山冬一郎・詩/團 伊玖磨・曲)

12. 蝶(紫野京子・詩/寺嶋陸也・曲)*新曲

13. 挿木をする(中野重治・詩/林 光・曲)

14. 春がすみ(まど・みちお・詩/山中惇史・曲)

15. 落葉松(野上 彰・詩/小林秀雄・曲)

16. 風をみたひと(クリスティナ・ロゼッティ・詩/木島 始・訳詩/木下牧子・曲)

17. 揺籃のうた(北原白秋・詩/草川 信・曲/寺嶋陸也・編曲)

18. いつもの子守歌(別役 実・詩/池辺晋一郎・曲)

19. ウムプリ ヤーヤー(原詩:オロッコ族伝承詞/伊福部 昭・曲)

20. 祖母の子守うた(江間章子・詩/林 光・曲)

21. 星の旅(谷川俊太郎・詩/寺嶋陸也・曲)

22. 歌ごえはささやく(中村千栄子・詩/湯山 昭・曲)

23. あしたのうた(宮本益光・詩/加藤昌則・曲)


発売元の触れ込み;

日本のうたを知り尽くした作曲家でありピアニストの寺嶋陸也と共に、2023年生誕100年を迎える中田喜直の日本を代表する歌曲から、今を生きる作曲家たちの歌曲まで後来に歌い継ぐべく日本のうたを全23曲収録。短い歌曲に込められた郷愁や憧憬、自然への思いやり、慈しみの心を優しく歌い上げます。親子三代で聴いてほしい我が日本のうた」


看板に偽りはない。中田や團伊玖磨、平井康三郎ら日本歌曲の定番の間に本業は作曲の寺嶋陸也やその師の林光、新進の加藤昌則、山中惇史らの作品を散りばめ聴いていて飽きない。どこまでも優しく心に沁みる幸田の柔らかな高音、随所に鋭い感性がきらめく寺嶋のピアノの組み合わせも絶妙だ。コロナ禍や経済不振、ウクライナ問題をはじめとする世界の不安といった重荷を一瞬忘れ、美しく懐かしい時間を取り戻せるような気がしてくるから不思議だ。2023年7月3〜5日、千葉県の浦安音楽ホール・コンサートホールでセッション録音。

(日本コロムビア)





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