• 池田卓夫 Takuo Ikeda

メイエのクラリネットを最高に輝かせた山田武彦のピアノ

最終更新: 2018年10月27日


ほぼ年1回、今は故郷でジムを営むかつてのパーソナルトレーナーにフォームや筋力のチェックを受けつつ、向こう1年間のボディメンテナンスのメニューを考えていただくのを兼ね、静岡音楽館AOIの主催公演を聴きに来る。今回は10月26日のポール・メイエ、山田武彦によるクラリネットとピアノのデュオリサイタル。すべてドイツ・ロマン派でシューマンの 「幻想小曲集」、ライネッケのソナタ「ウンディーネ」、山田編曲のR・シュトラウス「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」、ウェーバーの「協奏的大二重奏曲」。アンコールには山田作曲の「日本の秋祭りの情景」、ドヴォルザークの「ソナチネ」と一転、民族色豊かな小品を並べた。


何より2人の音楽に向き合う姿勢が高い次元で一致、高度の技術と有り余る表現の引き出しを決してひけらかさず、作品の内側に埋もれさせていくことで、深い味わいをたたえた演奏が成就した。ライネッケの淡いロマンを殺してしまわないよう、シューマンの濃厚な音たちを秋にふさわしいセピア色の世界に引き込み、ウェーバーの大作に集中してもらうためにも、ティルの華麗で豪快な編曲で緊張を和らげる。絶妙の選曲、配列だったと思う。


メイエの演奏は指や息のノイズが皆無で、キリッと明るい音色が相変わらず美しい。山田のピアノは良い意味で伴奏者の則をわきまえつつ、隙のない音の絨毯を敷き詰め、メイエの芸を最高に輝かせる。ティルの編曲にはちゃんと、ピアノのヴィルトゥオージティーも仕掛けてあり、フランス仕込みの「完全なる音楽家」の道を着実に歩んでいる。静岡まで聴きに来た甲斐のあった演奏会だった。





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