恒例の新年3点セット。サントリーホールのウィーン・フォルクスオーパー交響楽団、東京文化会館の東京都交響楽団「響の森」に続くトリは、いつも渋谷ヒカリエの東急シアターオーブの「ニューイヤー・ミュージカル・コンサート」。今年もほぼ同じ舞台セット、司会&通訳(溝淵俊介)、指揮者(若林裕治)で「座長」格の「レ・ミゼラブル」おじさん、ロベール・マリアンも不動の顔ぶれで、高貴な香りすら放つ極上のマンネリ感が心地いい。他の4人はトニー賞最優秀女優賞受賞のアリス・リプリー、「ノートルダムの鐘」のエスメラレダ役で好評のダニエル・ウィリアムソン、「キンキー・ブーツ」日本ツアーでブレイクしたアダム・カプラン、2012年の「シカゴ」日本ツアーで初来日したトニー・ヤズベックと、生きのいい顔ぶれだ。前半と後半、13曲ずつの計26曲にアンコール2曲。「南太平洋」「雨に歌えば」「サウンド・オブ・ミュージック」の古典からバーンスタインの「オン・ザ・タウン」、近年の「ウィキッド」「ノートルダムの鐘」「レ・ミゼラブル」まで、誰でも一度は耳にしたことのある名曲の数々が、素晴らしい歌唱とともに、よみがえった。
客席は満席。お客様の反応も抜群で、すっかり渋谷の新春に定着した感がある。5人のアーティストは全身全霊で客席と向き合い、時にはステージから客席に下りて、直接のコミュニケーションをとる。一番感心したのは、アダム・カプランのさりげない心遣い。前半で5人が1階席を回りながら歌ったとき、通路から2番目に座っていた小さい女の子に目をとめ、握手をサービスした。最後のカーテンコール。全員でステージから客席へのプレゼントを投げる瞬間、アダムは突然客席に下り、先ほどと同じ少女にその包みを手渡した。まだ年端もいかないのに最後までお行儀よく聴いてくれた子どもにも感謝の意をきちんと表し、未来のミュージカルファンをゲットしようという気持ちがビンビン伝わってきた。過酷な競争の中で生きるブロードウェイ一線のエンターテイナーの真骨頂をみた気がして、ジーンときた。
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